“食べ物付き”情報誌が変えたい「消費者の意識」とは:新編集長が各地で誕生(4/4 ページ)
食べ物が“付録”として付いてくる情報誌「食べる通信」――。生産者の情報を消費者に届けることが目的だ。発起人の高橋博之氏は、なぜこのような取り組みを始めたのか。
日常的に生産者とつながるアプリ
「国内の一次産業が大変なら輸入に頼ればいいという意見の人もいますが、私はそう思いません。食べ物は生きていく上で絶対に必要なものです。もし食料自給率がゼロになってしまったら、国際社会の中で立場の弱い国になるでしょう。たとえどんなに効率が悪くても自給率はある程度守っていくべきだと思っています」
そう語る高橋氏の活動は「東北食べる通信」に止まらない。
16年の秋から、消費者が生産者から食材を直接購入できるスマートフォン向けアプリ「ポケットマルシェ」をリリース。生産者と手軽にコミュニケーションを取れるのが特徴だ。
消費者が生産者のプロフィールを見たり、オススメの調理方法について生産者に直接質問することも可能。また、購入して食べた後に、感想を送ることができるなど、単なる売買でなく、高橋氏が実現したい「消費者と生産者のつながり」を意識した機能が実装されている。
「食べる通信と違い、生産者と日常的につながることができ、生産者が情報を直接伝えることができるのが良い点です」
まだリリースして1年ほどだが、生産者は400人、消費者は2万人以上が登録している。17年9月には、フリマアプリ大手のメルカリや投資機関などから1億8000万円の出資を受けた。利用者の拡大に期待できそうだ。
取材中、高橋氏から「当事者意識」というワードが何度も出てきた。食の問題に限らず、課題先進国では傍観者をいかに当事者に変えていくかが求められているのだという。
「例えば、教育現場でも同じことが言えます。保護者がクラスの問題、子どもの問題などを学校や教師に全部任せている。当事者(参加者)にならないから『モンスターペアレント』ような人が出てくる。自分も何かできないか――という当事者意識あれば、文句よりも手助けする行動が先に出てくるはずです。傍観者ではなく、参加者が増えなければ教育現場も生産現場も疲弊していきます。日本は少子高齢化で課題先進国。この当事者意識が、あらゆる現場で求められています」
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