47都道府県のポテチが売れている、開発の狙いは?:あの会社のこの商品(2/5 ページ)
カルビーは各都道府県ならではの味を再現したポテトチップスを発売した。観光客向けのお土産ではなく、地元の住民に向けてつくったという味は、普段ポテトチップス売場に足を運ばない人たちが買っているという。誕生の裏側に迫ってみた。
ポテトチップスはコミュニケーションツールになる
きっかけは16年、東日本エリア(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、長野、新潟)限定で発売した「ポテトチップス いかにんじん味」の成功にあった。いかにんじんは福島県の郷土料理で、カルビーの伊藤秀二社長兼COOの出身が福島だったことから実現。伊藤氏と福島市の間で、「地元を元気にすることができるポテトチップスができないか?」という話が出たことから発案され、開発された。
5月に発売したところ、福島県内で予定していた1カ月の販売数量である10万袋をわずか1週間で売り切る。再発売となった6月も勢いが衰えることがなく、福島県を中心に29万袋が売れた。その後の反響も高かったことから、地域限定品としては異例の再々発売を8月に実施した。
この商品に対し、同社には「福島から離れて暮らす親戚に送りたい」といった声が数多く寄せられたという。ポテトチップス部ベーシック課 課長の荒木友紀さんは、「ポテトチップスがコミュニケーションにつながっていることに驚きを感じました。中には、箱買いして誰かに送った人もいたほどです」と振り返る。いかにんじん味の成功は、ポテトチップスがコミュニケーションツールになり得ることを示した。
これをきっかけに同社は16年9月、47都道府県の味のポテトチップスを開発することを決定する。荒木さんはこの話を最初に聞いたとき、スケールの大きさにびっくりしたという。とはいえ、いかにんじん味の成功から、このプロジェクトは普段ポテトチップスを買わない新たなユーザーを開拓できる可能性を秘めていると理解し、市場活性化に対する前向きなチャレンジだと捉えた。
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