残業時間を減らす方法は? ポイントは「時間以外」に注目すること:残業の根本原因とは何か(2/3 ページ)
残業時間を減らすために必要なのは、早期帰宅を促すことだけではありません。仕事量の適正化や負荷軽減など、残業の要因となる問題を解消する仕組みを提供することが重要です。
残業の「原因」を解消する施策
では残業の原因となるものは何でしょうか。
社員が効率的に働いていて、残業代が目当ての「生活残業」がないという前提では、仕事量が社員の仕事処理能力を超えている、ということが原因として考えられます。そこで、仕事量の適正化や社員が生産性を上げられるような施策を3つご紹介したいと思います。
1.仕事量の適正化
社員が業務時間内で処理できる仕事量を超えれば残業が必要になりますので、仕事量を処理能力に合わせることが理想です。とはいえ、オフィスワークでは仕事量と処理能力を定量的に比較することが困難な場合が多いでしょう。
そのような場合、「タスクボード」と呼ばれる手法によって、大まかに仕事量と処理能力のバランスを視覚化することが可能です。
タスクボードは、仕事をそれ以上細かくできない、または細かくする意味がない「タスク」のレベルまで細分化し、そのタスクを付箋紙などに記載し、ホワイトボードなどにToDo(未着手)、Doing(着手中)、Done(完了)という3つのステータスに分類して貼って管理する手法です。
ToDoだったタスクに着手したらDoingに移動させ、タスクが完了すればDoneにする。このようにタスクを管理することで、ToDoやDoingばかりが増えていくようであれば、仕事量が処理能力を上回っていると捉えることができるでしょう。こうした手法を使うことで仕事量と処理能力の相対的なバランスを視覚化することができるため、そのバランスを取るために管理者がタスクを他の社員に割り当てたり、タスクを後回しにしたり、必要な策を講じることが可能となります。
このタスクボードを付箋紙とホワイドボードで行っても良いでしょうし、最近ではTrelloなどの無料で使えるツールもありますので、それらを使うことも良いかもしれません。
2.仕事に関連する負荷の軽減
仕事量を直接調整する以外に、社員の負荷を軽減することで生産性を高めるという方法もあります。例えば多くの社員の負担となっている「通勤の負担」です。
アットホームが2014年7月15日に発表した、『「通勤」の実態調査2014』によると、東京都の平均の通勤時間は1時間程度という調査結果があります。これを社員が業務ではないことに毎日2時間のエネルギーを使っているという見方をすると、この負荷を少しでも解消することで仕事の生産性を上げることができる、と考えることができます。実際、在宅勤務によって生産性が向上されたことを検証した論文も出されています。(参考:トレードシフトブログ)
在宅勤務のメリットは通勤時間のカットだけではありません。男女共同参画白書(平成28年度版)によると、日本の女性は出産を機に約6割が退職するという調査結果があります。「保育園が見つからない」「やはり子どものそばにいたい」など、働く意思もスキルもある人がやむを得ず退職をしてしまうことが発生しているのです。
在宅勤務が導入されれば、子どもの心配によって仕事の生産性が落ちることもなくなり、それまで退職していた女性も働き続けることが可能となります。結果として生産性が向上するとともに労働力が増えるため、企業全体で見ると残業の削減効果が期待できます。
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