できる営業マンが“他社商品”も勧める理由:一流になった「きっかけ」(2/2 ページ)
一流の営業マンと言われる彼らも最初から一流だったわけではない。一流の営業マンへと変わる、「きっかけ」が必ずあったはずだ。大手菓子メーカーのグリコで活躍する営業マン、渡邊一雅さんもその1人である。そのきっかけとは……。
相手の利益を一番に考えられるか
渡邊: 私が全く結果を出せなったときは、自分の成績さえ上がればいいという自分本位の営業でした。「買ってください」というスタンスでは、とにかく下手に出てお願いするだけになってしまいます。
そうではなく「こうすればもっと売り上げがあがりますよ」と、”対等な関係”で提案していくスタイルに変えてみたことで、うまくいくようになりました。先方の役に立とうという意識があるのかどうか。これがダメだったときとの、大きな違いですね。
例えば「毎日果実」は朝食として食べてもらう商品なので、「パン売り場のエリアで、○○(競合他社の商品)などと一緒に置けば売り上げが上がるのでは?」などと提案してしていました。
「自社商品を置いてもらおう」というよりも、「どうすれば先方の売り上げが上がるのか」を考えたのです。自社商品よりも、他社商品を勧めることもありました。
――しかし、早く結果を出したかったはずです。他社商品を勧めている余裕はなかったのでは?
渡邊: もちろん、自社商品を多く置いてもらうことが目的です。しかし、自分の提案(営業)によって本当に先方の売り上げが上がるのかを考える必要があります。
とにかく自社商品を置いてもらうことを優先した提案によって、店舗の売り上げが下がってしまったら、たとえ自分の営業成績を達成したとしても、その後はもう耳を傾けてもらえなくなるわけです。
私は店舗の利益になる提案を心掛け、実際に店舗の売り上げを向上させました。それによって信頼を得られたことで、結果的にその後の営業がだいぶ楽になったのです。「渡邊君が言うなら……」と。つまりこの「信頼力」が重要であって、目先の成績ばかりに捉われていては、うまくいかないのです。
後輩を見ていても、結果が出ない人は「新しい商品が出ました。だから買ってください」という自分本位の営業で、win-winの提案ができていません。
短期的な自分の成績ではなく、相手の信頼を勝ち取る方がずっと大切で、中長期的にも良いのです。自社商品を売ることに固執せず、純粋に相手の利益に提案をしていってほしいですね。
――最後に、思うように結果が出ずに思い悩んでいる営業マンに向けてアドバイスをお願いします。
渡邊: 目の前の仕事に追われないようにしてください。意識して時間を作り、仕事の役立つ情報を取ってください。私の場合はいろんな売り場を見に行きました。それを実践したことで「あそこの店舗ではこんな売り方をしていましたよ」と、情報提供ができるようになりました。そういう小さなところから信頼を得ていかなくてはなりません。
また、目先の仕事だけ追いかけてしまうと、時間に追われ、考える時間(工夫する時間)も取れなくなり、良い仕事ができません。時間をつくるために逆算して動く癖をつくってください。
一度成功体験を得ると自信が付き、自分なりの戦い方が分かってくるはずです。頑張ってください。
営業の極意
- 相手の利益を最優先に考える
- 目先の成績よりも「信頼力」が大切
- 普段から意識して時間をつくり、仕事の役に立つ情報を探す
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