縮小するクリーニング店 打開策は?:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
クリーニング店のビジネスが厳しい状況に追い込まれている。直接的な原因はコインランドリーの増加だが、状況はもう少し複雑だ。労働者の賃金やライフスタイルの変化など、複数の要因が絡み合っている。そしてシェアリングエコノミーの台頭がこの状況を加速させる可能性が高まっている。
コインランドリー市場はファミマの参入でさらに拡大へ
クリーニング店への支出が減少する一方、コインランドリー市場は拡大が続いている。2014年3月末時点における施設数は1万6693店となっており、10年間で3割以上も増えた。個人投資家の間では、コインランドリーは利回りのよい投資案件と見なされており、投資をアレンジしたり、フランチャイズ展開する企業も増えている。
こうした状況を自社のビジネスに取り込もうとしているのがコンビニのファミリーマート(以下、ファミマ)である。同社は昨年11月、家電メーカーのアクアと提携し、コインランドリー事業に進出すると発表した。実証実験を行うため今春をメドに1号店を関東地域に出店するという。
ファミマでは、コンビニとコインランドリーを融合させた新しい店舗デザインを検討している。コンビニに行く際に洗濯物も持ち込み、洗濯が終わるのを待っている間に、店内で買い物をしたり、イートインスペースで食事を済ませるといった利用を想定している。主に駐車場のある店舗が設置の対象になるという。
コンビニの店舗数は極めて多く、他の業態とは桁が違う。ファミマは全国に約1万8000店舗を展開しており、駐車場のある店舗は約1万2000店舗となっている。この1割にコインランドリーが設置されただけでも、コインランドリー業界では圧倒的な事業規模となる(ちなみに同社は19年度に500店舗にコインランドリーを設置するとしている)。
もっとも、コインランドリー単体での収益はそれほど大きいわけではない。先ほど、コインランドリー事業に参入する個人投資家が増えているという話をしたが、競争は激化しており、投資利回りは年々下がっているともいわれる。
コンビニにとってコインランドリーは集客ツールなので、単体のビジネスより採算ラインは低く設定しているはずだ。ファミマに続いて他のコンビニもコインランドリーに参入してきた場合、店舗数が一気に増えてしまい、過当競争に陥る可能性が出てくる。
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