乗り合いタクシーとローカル鉄道は共存できるか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
東京都町田市が乗り合いタクシーの運行実験を始める。乗り合いタクシーとはどのような仕組みだろうか。そして、鉄道やバスとの関係は競合か共存か。
鉄道の利点を考えさせられる
こんなに便利な乗りものがあったら、平行する第三セクター鉄道に乗る必要はない。そこまで思い至れば、鉄道の役割と利点を整理する必要がある。デマンド型乗り合いタクシーがある場合、鉄道が必要か。それはどんな場面か。
鉄道の基本的な性能の問題だ。1つは大量に輸送できる。通勤ラッシュや通学などの人数は乗り合いタクシーでは無理。100人運ぼうと思ったらタクシーは25台必要で、渋滞の原因になる。そもそも地方のタクシー会社はそんなにクルマを持っていない。
次に鉄道は高速である。自動車は(タテマエとして)法定速度の時速60キロが限界だ。信号のない田舎道だから、それでもかなり所要時間は短いけれど、鉄道なら田舎でも時速80キロ、時速100キロは出せる。問題は、それだけの人数とスピードに対する需要があるか、ということだけれども。
鉄道のメリットはまだある。在来線規格であれば車両の相互直通が可能で、県庁所在地駅や新幹線の駅まで乗り換えなしで行ける。そして貨物輸送だ。主に環境面になるけれども、中長距離はトラック輸送より鉄道の方が利点は大きい。
しかし、現在、ローカル鉄道のほとんどは自社線内、またはJR線の最も近い拠点駅に乗り入れる程度。貨物輸送は大都市を結ぶコンテナに限られている。鉄道は、本来持っていたはずの利点を自ら失っている。田舎の地域交通にとっては鉄道の分が悪い。
このままでは、JR拠点駅と末端終着駅を結ぶだけの地方ローカル線は、デマンド型乗り合いタクシーに置き換えられてしまう。利点不利点では勝ち目がない。どうしても鉄道を残したければ、乗り合いタクシーの乗り場に鉄道の駅を加えてもらい、組み合わせて使ってもらう。つまり、競争ではなく、共存の道を探るべきだ。乗り合いタクシーにできないこととして、列車内で宴会ができる、観光列車を運行できるというメリットはある。第三セクター鉄道の生き残る道として、地域の観光振興政策と連動する必要もあろう。
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