乗り合いタクシーとローカル鉄道は共存できるか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
東京都町田市が乗り合いタクシーの運行実験を始める。乗り合いタクシーとはどのような仕組みだろうか。そして、鉄道やバスとの関係は競合か共存か。
「便利」の次に「楽しい」乗り合いタクシーが来る
東京都町田市の乗り合いタクシーの実験は、2月1日から3月30日まで。平日のみの運行で、予約は不要。つまり、単純に路線バスをセダン型タクシーに置き換えただけだ。料金は200円均一。運行ルートはJR横浜線の相原駅から丸山団地まで。乗り切れなかった場合は迅速に続行便を出すという。輸送量の調整も容易である。
この実験は、乗客が少なかったら廃止、とはならないだろう。客が乗らない、あるいは時期に左右されるなら、田舎のようにオンデマンド型を整備すればいいだけだ。乗客が増えて渋滞するということなら、ミニ版タイプ、ミニバスタイプの導入で足りる。
沖縄では乗り合いタクシーによる観光ツアーの実証実験が始まった。これはツアー客が個々にタクシーを使うと渋滞するため、コースと乗客を1台のタクシーに集約しようという試みだ。レンタカーで行くようなところに、運転が不安な人も行けるというメリットもある。沖縄を訪れる人は飛行機でやってくる。自分のクルマで乗り付ける人はいない。
大都市から沖縄にきた観光客のほとんどは、公共交通を使いこなす人で、クルマなしでなんとかなってきた人々だ。いや、レンタカーが前提となるならば、運転経験のある人が多く、いままで、クルマに縁がなかった人は、沖縄旅行そのものをちゅうちょしていたかもしれない。観光乗り合いタクシーは、公共交通中心で行動していた大都市の人々こそ活用すべき乗りものだ。ただし、この事例は観光バスの乗用車版の域を出ない。
デマンド型乗り合いタクシーは、やはり地域に住んでいる方の乗りものであって、遠方から訪れる観光客にとっては使いにくい。ただし、その不便さは、IT技術を使えば解決できるかもしれない。スマートフォンで路線や時刻を確認でき、予約もできれば解決する。
関連記事
- 2018年、鉄道の営業力が試される
「企業として、需要があるところに供給する。そういう当たり前のことを、鉄道事業者はやってこなかったのではないか」。つい先日、ある第三セクター鉄道の社長さんに聞いた言葉だ。小林一三イズムが落ち着き、人口が減少傾向にある中で、鉄道の営業努力が試される。2018年は、そんな時代になると思う。 - インバウンドを盛り上げる「日本海縦断観光ルート」胎動
京都丹後鉄道を擁するWILLERと日本海沿岸の新潟市、敦賀市、舞鶴市、豊岡市は「日本海縦断観光ルート・プロジェクト」を発表した。豊かな観光資産を持つ地域が連携し、従来の拠点往復ではない「回遊の旅」を提案する。成功の条件は「移動手段の楽しさ」だ。交通事業者にとって大きなチャンスである。 - グーグル&Uberつぶしのトヨタ・タクシー
現在開催中の「第45回 東京モーターショー」。その見どころについて業界関係者から何度も聞かれたが、その説明が面倒だった。自動運転車や固体電池のクルマとかなら「ああそうですか」で終わるのだが、今回はタクシーなのだ。 - JR信越線で「15時間立ち往生」は、誰も悪くない
1月11日夜から12日朝までに発生したJR信越線の雪害立ち往生事件について、情報と所感を整理してみた。体調を崩した方は気の毒だったけれども、何よりも死者がなく、最悪の事態に至らなくて良かった。本件は豪雪災害である。人災ではない。今後に生かそう。 - 鉄道路線廃止問題、前向きなバス選択もアリ
赤字ローカル線の廃止論議で聞く言葉に「バスでは地域が衰退する」「バスは不便」「鉄道の幹線に直通できない」などがある。鉄道好きとしては大いに頷きたいところだ。しかし、ふと思った。バスの運行に携わっている人々は、これらの声に心を痛めていないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.