卓球王者の張本が、いまひとつ支持を得られない要因:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/3 ページ)
全日本卓球選手権の男子シングルス決勝で、14歳の張本智和が王者・水谷隼を破って優勝した。最年少優勝の偉業を達成したのに、いまのところ“張本フィーバー”は起きていない。なぜ新王者がいまひとつ支持されないかというと……。
アンチを黙らせて
張本と比較するレベルではまったくないが、女子卓球の国民的人気選手・福原愛もポイントを奪った際にトレードマークとも言える「サー」の掛け声を口にすることは有名だ。ただし絶叫して「うるさい」と感じさせるようなものではなく、周囲では逆に「爽やかさ」を覚える行為としてとらえている人が大半を占めている。だから福原の「サー」は、世間から文句どころか愛くるしさの象徴として受け止められているのであろう。
だがいくらボリュームの大きさやときにパフォーマンスが加わることの違いはあれども同じ掛け声を口にしているはずの張本が、ここまでブッ叩かれることにはどうしても違和感を覚える。しかも彼はまだ14歳だ。これから日本を代表する卓球選手としてさらなるジャンプアップが見込まれる成長株の少年が大人顔負けの偉業を達成したにもかかわらず、前出の張本氏を含めて寄ってたかっての“口撃”を浴びせられる光景は正直見ていて気分がいいものではない。
JOCエリートアカデミーで育成され、その才能を開花させた張本は卓球王国・中国の牙城を切り崩す可能性を秘めている。両親はともに中国出身の卓球選手。2歳からラケットを握り、幼少時から両親の英才教育を受けてきた。仙台出身で国籍は日本に帰化しており、20年の東京五輪で金メダルを獲ることを当面の目標にしている。同じ日本人として14歳少年のこの素晴らしい夢をぜひ実現してほしいと願うことは、ごく普通の考えだろう。
ただ残念ながら、ネット上で「張本智和」と入力すれば、「国籍」の二文字が上位に表示される。こうした背景を考えると、どうも彼は「チョレイ」と「ハリバウアー」以外のところでも、過剰に叩かれているような気がする。便利になった半面、何か陰険で嫌な世の中になってしまったと痛感しているのは筆者だけではあるまい。
繰り返しになるが、彼はまだ14歳である。こうした逆光に負けず着実に成長し続ければ、アンチを黙らせるはずだ。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
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