沖縄の渋滞緩和に一役、自動走行バスにみる地方活性化の可能性:クルマ社会に朗報?(4/6 ページ)
沖縄本島を訪れた人ならご存じだろうが、都市部を中心に交通渋滞が深刻な問題となっている。まさにクルマ社会の弊害と言えるのだが、この問題を解決すべく内閣府などが今力を入れているのが自動運転バスの実証実験だ。
経済的・産業的な観点からの効果
バスの自動走行を実現することでどんなメリットが得られるのだろうか。
まずは、交通事故の低減が挙げられる。伊沢氏によると「日本でも年間4000人弱の交通事故による死亡者がいまだにいるが、その原因の大半は運転ミス。自動運転であれば、そういったことがなくなり、安全な道路交通が実現する」という。
また、少子高齢化に伴うドライバーの担い手不足がある。地方では公共・交通機関がどんどんなくなっている。そういう状況の中で、特に高齢者の方の交通機関の確保が課題となっている。「誰もがいつまでも自由に移動できる社会を作っていくことが、これからの日本社会にとって重要なことだと考えている」(伊沢氏)
さらに経済的な観点に目を移すと、自動車産業は「100年に一度の大きな技術的な変革期」だと言われている。日本の基幹産業である同産業は、その国際競争力を維持していくことが非常に重要だ。そのためには自動運転技術の向上がカギを握っている。また、物流なども自動運転できたら効率的な運用が可能になり、その他センサーや電子産業などにも経済的な効果があると同プロジェクトでは推測する。
内閣府 大臣官房審議官(科学技術・イノベーション担当)の黒田亮氏は「公共交通機関は走行エリアが特定できるので、限られたルートにある信号や道路に自動走行しやすいような工夫を積み上げられる。自動走行のレベルが上がるのは、普通乗用車よりも速いと予測する。自動走行という意味では、バスなどの公共交通機関の方が実用化は近いのでは」と語る。
また、プログラムディレクターである葛巻清吾氏(トヨタ自動車)は「今回のような自動走行に関する単純な横展開は意味がない。同じことをやっても技術的、発展性はない。1カ所で得られた成果を次のところで生かしてステップアップを図ることが重要である。一歩ずつ進みながら横展開を図っていく必要がある」との見解を示す。
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