沖縄の渋滞緩和に一役、自動走行バスにみる地方活性化の可能性:クルマ社会に朗報?(3/6 ページ)
沖縄本島を訪れた人ならご存じだろうが、都市部を中心に交通渋滞が深刻な問題となっている。まさにクルマ社会の弊害と言えるのだが、この問題を解決すべく内閣府などが今力を入れているのが自動運転バスの実証実験だ。
ゆっくりだが、確実な走行
筆者も実際に試乗させてもらった。出発地点から自動的にアクセルが踏まれ、運転手がハンドルを握ることなく走行を開始した。最高速度は40キロとのことだが、今回は常時30キロ前後の速度で走行。体感としては実際の速度よりもゆっくり走行していたが、正確かつ確実に走行しているような印象だった。
実験車両では、GPSによって前方車両の速度と相対距離を測定し、前方車両が止まると自動的にブレーキを踏んで停止する。ただし、現段階では信号機手前で先頭になった場合のみ、手動(オーバーライド)でブレーキを踏む必要がある。
走行コースには路肩に車両が停車するエリアもあったが、その場合、右側に40センチオフセットするように制御。ただし、車線をはみ出さないように工夫されており、路上駐車を自動的に回避していた。
ただ、障害物の検知の精度については、まだ改善の余地があるようだ。終点の宜野湾アリーナには人やクルマに慣れた野生の猫が多く、通行路をふさぐケースも見られた。現段階では猫などの小さな動物は障害物として検知できず、オーバーライドで対応する必要があるという。また、夜間の試験走行やスコールのような豪雨でも実施しているが、現段階ではGPS認識率は低くなるという。
バス停での正着制御では、30メートルまで近づいたら徐々に減速して自動的にウィンカーを出して停止するように制御されていた。今回の実験では、準天頂衛星を用いる方式と磁気マーカーを用いる方式を併用していた。
遠隔から運転状況を把握するために車両の位置情報や車両情報、社内外からの映像、音を確認できる運行管理システムを設置。車内の状況は、車内に設置されたセンサーとAIで見守っている。AIでは「立っている/座っている/移動している」などの人間の状態の画像を学習させ、認識率94%で車内の状況を監視している。また、管制センターで管制官が車両への指示を送信できる。
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