コンシェルジュはどこで仕事をしているのか ホテルの中だけでなく:超・営業力(3/4 ページ)
ホテルのコンシェルジュといえば、お客さんのリクエストに応える――といったイメージが強いが、実際はどのような仕事をしているのだろうか。新宿ワシントンホテルで活躍している平野敏美さんに、コンシェルジュに必要なスキルなどを聞いた。
自分だけの情報を手にしなければいけない
――コンシェルジュの仕事って、「お客さんから言われたことをやっていればいいのね」と思われる人も多いのでは。
「言われたことをやっていればいい」といった世界ではないですね。お客さんにプラスアルファのサービスや情報を提供するのに、自分の情報量がなければいけません。例えば、人気レストランを予約する場合、誰がやっても同じと感じるかもしれませんが、実は違う。このコンシェルジュだから予約ができたといったケースがあるんです。なぜならその人は人気店との太いパイプがあるので、融通が利くんですよね。
また、お客さんから「このレストランはどうかな?」と聞かれることが多いのですが、そうしたときにどのように答えることができるのか。行ったことがあれば、いろいろな情報を提供することができますが、行ったことがなければ、ネット上でアップされている情報しか提供できません。一度でも足を運べば「外国語に対応しているのか」「スタッフの語学力はどうなのか」「お店は海外の人を受け入れようとしているのか」「食物アレルギーに対応しているのか」といったことを確認できるので、自分のチカラになるんですよね。コンシェルジュに接してくるのは海外の人が多いので、レストランなどに行った際には、自分が外国人になった目線でチェックしています。
コンシェルジュってホテルの中で仕事をしているので、「お客さん以外で、外部の人と接する機会は少ないのでは」「外に出ることも少ないのでは」と思われている人が多いかもしれませんが、実は違う。観光地であったり、レストランであったり、ツアーであったり、できるだけ現場に足を運んで、自分だけの情報を手にしなければ、この仕事を続けることは難しいかもしれません。
――平野さんはホテル椿山荘東京で研修を受けて、ホテルグレイスリー新宿でコンシェルジュの仕事に携わりました。その1年後の2016年9月に、新宿ワシントンホテルでもコンシェルジュ部門を立ち上げ、その初代メンバーに。この仕事をしていて、失敗をした経験はありますか?
たくさんあります。海外から来られた人が「レストランに行きたいんだけれど、どこかいいところないかな?」といった質問がありました。会話をしていくなかで、行きたいところは「しゃぶしゃぶ店」であることが分かってきた……いえ、思い込んでいたんですよね。希望の場所や予算などを確認して「この店はどうですか?」と聞いたところ、そのお客さんは「そこでいいわ」という返事だったので、予約しました。
ところが、後日。サイトの口コミ欄で、そのお客さんは「コンシェルジュに勝手に勧められた。自分は『しゃぶしゃぶ店に行きたい』とは言っていないのに」と書いていました。このほかにも「日本は初めてだったので、もう少し質問してほしかった。私たちが聞かなかったこともいけないが、コンシェルジュであればそれくらいの対応はしてほしかった」とつづられていました。
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