人類は再び月へ 発表されたNASAの予算案とは?:宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)
米国連邦政府の予算教書で、NASAの今後の計画が見えてきた。今回は2022年から始まる月周回軌道上の居住基地建設、23年の有人月近傍ミッションなど目玉となるプロジェクトを紹介したい。
地球周辺の宇宙活動は民間主導へ
このように深宇宙に向けた多数のプログラムが組まれている一方で、地球近傍の宇宙空間における活動に関しては、民間企業の力をより活用する商業化を進めていく方針だ。
既に国際宇宙ステーションへの物資輸送はSpaceXなどが商業サービスとして担っているが、今後は宇宙飛行士の輸送にも商業サービスを適用する予定であり、そのための開発プログラムには継続予算が付いた。
他方で、国際宇宙ステーションに関して、24年までの運営は各国で合意されており、米連邦政府も毎年15億ドルほどの予算を投下している。ただ、今回の予算教書で25年に連邦政府予算の直接支出を終結させる方針が示された。今後、米国議会、産業界、各国政府からさまざまな反応が出ることが予想される。
併せて、予算教書では将来的に民間企業とNASAが利用可能な新たな低軌道プラットフォームの開発促進をしていくために1.5億ドルの予算が新規に割り当てられた。米Bigelow Aerospaceや米Axiom Spaceなどが商業宇宙ステーションや商業宇宙ホテルの構想を掲げてさまざまな実証実験を行なっているが、今度こうした活動が加速する可能性がある。
見えてきた米国の宇宙開発とビジネスの方向性を今後も追っていきたい。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。
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