日本の小型ロケットは世界のライバルに勝てるか?:宇宙ビジネスの新潮流(1/3 ページ)
7月30日にインターステラテクノロジズが観測ロケット「MOMO」初号機の実証実験を実施、8月9日にはキヤノン電子が筆頭株主となり、ロケットの開発企画を行う新会社が設立と、日本の小型ロケット開発が盛り上がっている。
日本の小型ロケット開発が一気に加速した。
7月30日にインターステラテクノロジズが観測ロケット「MOMO」初号機の実証実験を北海道の大樹町で行った。また、8月9日にはキヤノン電子が筆頭株主となり、ロケットの開発企画を行う新会社が設立された。今回はその背景を追う。
ホリエモンロケットは66秒間正常飛翔
ホリエモンの愛称でおなじみの堀江貴文氏が創業者を務めることで有名なロケットベンチャー企業のインターステラテクノロジズは、ロケット業界のスーパーカブを目指している。ポイントは、枯れて安定した技術を活用し、可動域の少ないシンプルな構成とすることで、量産してコストダウンを実現することだ。7月30日に観測ロケット「MOMO初号機」の打ち上げを大樹町で行った。観測ロケットとは、小型の実験装置などを高度100キロメートル以上の宇宙空間に打ち上げるためのロケットである。
筆者もライブ中継を見ていたが、最終ローンチウィンドウでロケットは無事に離床。66秒間正常飛翔した後、テレメトリが途絶したため、緊急停止を行い、落下予定区域に落下させた。同日の記者会見で稲川貴大代表は、マックスQ(ロケットにかかる動圧が最大化する点)において機体に何らかの不具合が発生した可能性を指摘した。
他方で、エンジンの動作・性能確認、打ち上げの準備や手順など実証実験を行ったからこそ取得できた知見や経験は大きいはずだ。稲川氏も「今回の実験の目的は、ロケットを設計・製造して、飛行時の特性を得ることだった。目標の高度100キロメートルには届かなかったが、データを取るという意味では、満足できる結果が得られた」と発表している。年内に再び打ち上げを目指すとともに、今後はロケットの多段化も同時並行で行う。
キヤノン電子が中心となりロケット企業を発足
また、8月にはキヤノン電子が筆頭株主(70%)となり、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行の4社とともに、新世代小型ロケット開発企画株式会社を発足した。小型衛星打ち上げ需要の獲得を目的とした打ち上げサービスの事業化を目指すという。
キヤノン電子が民生機器の量産やコスト削減の知見を、IHIエアロスペースがロケット開発やシステムインテグレーションの知見を、清水建設が各種インフラ等に関する知見を、日本政策投資銀行がエクイティファイナンスの知見をそれぞれ提供。ロケットの開発、生産コストの低減、需要の蓋然性、事業性検証などを行っていくという。2017年末以降に事業会社化を目指している。
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