日本の小型ロケットは世界のライバルに勝てるか?:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
7月30日にインターステラテクノロジズが観測ロケット「MOMO」初号機の実証実験を実施、8月9日にはキヤノン電子が筆頭株主となり、ロケットの開発企画を行う新会社が設立と、日本の小型ロケット開発が盛り上がっている。
数百機規模の小型衛星ビジネスが注目
ここにきて加速している日本の小型ロケット開発だが、背景にあるのは、世界の小型衛星打ち上げニーズだ。同連載でも何度か紹介しているように、世界では小型衛星による地球規模の観測網構築を目指す米Planetや衛星インターネット網構築を目指す米OneWebなど数百機規模の打ち上げニーズが存在する。
しかしながら、これまで小型衛星を打ち上げる手段は、大型衛星を打ち上げる大型ロケットの空きスペースを活用して相乗りする、国際宇宙ステーションから放出する、あるいは複数の小型衛星を同時に打ち上げるなど、限られた手段しかなかった。そこで、打ち上げ費用、頻度、自由度などの観点から新たな方法が期待されているのだ。こうした背景から日本および世界で小型ロケット開発が加速しているというわけだ。
有力企業の1つが、米国およびニュージーランドに拠点を持つRocket Labsだ。
06年に創業した同社は150キログラムの衛星を高度500キロメートルまで打ち上げるための小型ロケット「エレクトロン」を開発中だ。1回の打ち上げ費用は500万ドルを目指しており、さらに毎週打ち上げるという低価格、高頻度な宇宙アクセス革命を目指す。米Bessemer Venture Partnersや米Khosla Venturesなどから総額1億5000万ドルを調達しており、直近の企業価値は10億ドルを超えている。
エンジン製造に3Dプリンタを活用するなどしてロケット開発を進めるとともに、世界初の民間打ち上げ射場をニュージーランドに16年9月に建設した。17年5月に行った実証試験では、離床後4分後に高度224キロメートルまで到達、データに破損が起きたことで、通信途絶と受け取り、緊急停止を行った。今年秋には第2回目の実証実験を予定しており、完全な成功を収めれば、商業打ち上げサービスを開始するとしている。
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