J.フロントリテイリングが「英才」保育事業に参入、狙いは?:月々の費用は9万円
J.フロントリテイリングが保育事業に参入した。保育料は高めだが充実したカリキュラムを提供するのが特徴だ。
大丸松坂屋百貨店の持ち株会社であるJ.フロントリテイリングは2月27日、認可外保育施設の運営に乗り出すと発表した。事業会社を新たに設立し2019年4月に第1号園を開設する予定だ。同社は17〜21年度の中期経営計画において小売業以外のジャンルで新規事業を立ち上げると表明しており、今回の保育事業がその第1弾となる。
学習塾大手のやる気スイッチグループホールディングス傘下の拓人こども未来(東京都・中央区)が運営するバイリンガル幼児園「Kids Duo International」(キッズ・デュオ・インターナショナル、以下KDI)のフランチャイズ契約を結ぶ。開園予定の園は施設面積が300〜400坪、全12クラス(4学年×3クラス)で定員342人の認可外保育施設を想定している。第1号園の場所については「首都圏の近くで探している」(広報担当者)状況だ。
今回の事業立ち上げの背景について広報担当者は「小売り以外で生活者の不安を解消すべきだと判断した。当社の顧客層には子どもを預けるだけではなく教育もしっかりやりたいというニーズがある」と説明する。園を各地に展開して百貨店と連携させるサービスも想定しているという。
人気が高まる高額の幼児園
バイリンガル幼児園のKDIは神奈川県横浜市や東京都三鷹市などの首都圏で4園運営されている。定員は342〜432人だが「ほぼ満員に近い状態」(やる気スイッチグループホールディングスの広報担当者)という人気ぶりだ。
人気の背景は充実したカリキュラムだ。小学校3年生レベルの国語力と算数力の習得を目指しており、教育水準はかなり高いほうだ。園内の公用語は英語で各クラスにはネイティブスピーカーと日本人の教諭が配置されている。スポーツ指導にも力を入れており「幼稚園が終わったあと別の習い事に通わせずに済む。同じ場所で多彩な教育が受けられることが支持されている」(広報担当者)。
KDIに子どもを通わせるには多くのお金がかかる。入園金は16万円、月々の費用は9万2400〜9万8700円だ。給食費や延長保育料もあわせると実質的に毎月11〜12万円の支出となる。高額にもかかわらず保護者のニーズが高いため「今後も園を増やす予定はある」(広報担当者)。
KDIに子どもを通わせる親は経済的に余裕のある層である。親だけでなく祖父母の多くも百貨店の顧客層と重なるだろう。J.フロントリテイリングが苦戦している本業とのシナジーをどのように創出していくかが注目される。
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