ローソン参入で本格化 「EC生鮮市場」争奪戦:利便性向上が鍵
ローソンがスマホで注文した生鮮品などの商品を店舗で受け取れるサービスを開始した。EC生鮮市場を巡る競争は激しくなる一方だ。
ローソンは3月6日、午前8時までに専用のスマホアプリで予約した商品を指定した店舗で当日の午後6時以降受け取ることができるサービスを開始した。野菜、果物、牛乳、調味料など約500種類を扱う。サービス名は「ローソン フレッシュ ピック」。東京都世田谷区、渋谷区、神奈川県川崎市、横浜市の一部地域など約200店舗でスタートする。
対象店舗は順次拡大する予定だ。2018年度中に東京、神奈川、埼玉、千葉で取り扱い店舗数を約3000店増やす。18年度以降は大阪、名古屋などの主要都市にも広げる。平均単価は1500円、1店舗あたり1日10件程度の利用を見込む。専用アプリの目標ダウンロード数は18年上期で約9万件だ。
広報担当者は新サービスを導入することで「店舗では扱えない生鮮品の品ぞろえが増える」と説明する。現時点でも一部の店舗でバナナやニンジンなどの生鮮品を扱っているが数に限りがある。注文を受けてから店舗に配達することで実質的に店舗で取り扱える商品数が増えることになる。具体的には、生鮮品、冷凍されていない精肉、「ミールキット」と呼ばれる調理の手間を省く商品などが目玉になる。
利便性を重視する立場から「既存のネットスーパーのようにアイテム数を数千、数万と増やす予定はない」(広報担当者)。アイテム数が多すぎるとスマホでの検索に時間がかかってしまうからだ。あくまで「午前8時までに注文して当日の午後6時に受け取る」という点にこだわる。
拡大が見込まれるEC生鮮市場
新サービスが広まれば消費者は生鮮品を購入する手段が増える。
生鮮品を自宅に届けるサービスはセブン&アイグループとアスクルが運営する「IY フレッシュ」をはじめ、イオンやアマゾンが参入している。ローソンも「ローソンフレッシュ」というネットスーパーを運営している。しかし、受け取るためには自宅にいる必要がある。自宅にいなくても商品が届くサービスには生協の定期宅配があるが、首都圏の場合は配達日が週に1度と決まっているケースが多い。
ローソンは拡大する「EC生鮮」市場の獲得を狙う。同社の調査によると生鮮食品全体の市場規模は約25兆円。全体の約8割を占めるのはスーパーだ。EC生鮮市場は約1500億円しかないがEC分野の拡大で急成長が見込まれる。
本格的な人口減少社会に突入すると日本国内の生鮮食品市場が頭打ちになるのは明らかだ。今後はリアルの店舗と仮想店舗が生鮮食品の取り扱いでも競合する。女性の社会進出や共稼ぎ夫婦の増加で、多少価格が高くても利便性を求める消費者は増えるだろう。価格や品質だけでなくどれだけの利便性を提供できるかがEC生鮮市場を攻略する鍵となりそうだ。
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