「ワイモバ」トップが熱弁 躍進の裏に“ウィルコムの教訓”あり:前進なければ死あるのみ(3/3 ページ)
「Y!mobile」は、なぜ競争が激化する格安SIM市場で勝ち続けるのか。その背景には、前身ブランド「WILLCOM」の失敗で得た教訓が生きているという。ウィルコムで要職を歴任し、現在はワイモバのトップを務めるソフトバンク寺尾洋幸執行役員に話を聞いた。
「ずるい」「ずるくない」の争いはやめよう
“ウィルコムの教訓”を基にオリジナルの施策を打ち出し、確固たる地位を築いたワイモバは、今は追われる立場となっている。
総務省が開く検討会では、競合するMVNOから「サブブランドが、他のMVNOが実現不可能な価格設定をしているのは競争原理に反する」「サブブランドがキャリアとほぼ同等の通信速度を出せるのはおかしい。キャリアに優遇されているのでは」――といった批判的な意見も出ている。
寺尾氏はこうした批判に対して、「ワイモバは適正なコストを支払いながら、利潤の最大化を目指している。価格設定は一般的な格安SIMより高いはずだ。収益性の改善に向けて日々努力している」との姿勢を示す。
「他社は『速度をたくさん出したいし、安く売りたい』と考えているのだろうか。通信事業では、投資コストと価格設定のバランスを工夫して初めて利益が得られるものだ」と強調する。
「われわれが本来着目すべきは、ユーザーの満足度向上だ。『ずるい』『ずるくない』といった小さな争いはしたくない。私も、KDDIやNTTドコモがうらやましいと思いながら、20年間この世界で生きてきた。今後もお互い努力しようじゃないか」
“ヤフー版カウントフリー”の案もあった
昨今の携帯業界は大きな変化が続いており、17年末には楽天がキャリア事業への参入を発表。ソフトバンクはLINEモバイルと資本・業務提携を結び、ワイモバに続く“第三の矢”を傘下に収めた。
さらにソフトバンクは、株式上場に向けた準備を始めることも発表。「より自律的な経営視点・成長戦略を持つ」としているが、ワイモバは今後、変わりゆく環境の中で、いかにして力を伸ばしていくのだろうか。
寺尾氏は「詳細は明かせないが、面白いことをやっていきたい」と話す。「諸事情で没になったが、LINEモバイルの人気サービス『カウントフリー』を参考に、『ヤフオク!』『Yahoo!ショッピング』などにアクセスした際、通信料がタダになる“ヤフー版カウントフリー”をワイモバで提供するという案もあった」という。
「ただこの業界は、朝令暮改が当たり前。あくまで例え話だが、メリットを語ったAndroid Oneを突然廃止して、端末ラインアップを一新するかもしれない。ワイモバ版のカウントフリーをやっぱり始めるかもしれない。繰り返しになるが、常に新しい変化をしないと生き残れないからだ」
「ユーザーから『安くて便利』と評価されたウィルコムはもうない。常に厳しいことが起きていると仮定して改善を続けないと、どんな船も沈んでしまう。“二度と同じ明日は来ない”という教訓とともに、これからもワイモバを絶えず変化させていく」
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