松屋とすき家に「牛丼並盛」の値上げをためらわせた「吉野家の悪夢」:吉野家は後悔?(1/2 ページ)
松屋とすき家は相次いで値上げを行っている。原因は原材料費と人件費の高騰だが、主力の牛丼並盛の値上げは両社とも見送っている。背景にあるのは「吉野家の悪夢」かもしれない。
牛丼チェーン「松屋」を運営する松屋フーズは4月3日の午後2時から牛丼やカレーなどを値上げする。首都圏以外の約350店舗(18年3月時点、以下同)で提供する「牛めし並盛」を290円(税込、以下同)から320円に引き上げる。定食やカレーなどのメニューも10〜50円値上げする。
価格改訂の理由を松屋フーズの広報担当者は「原材料価格と人件費が高騰したため」と説明する。牛めしに使用する米国産牛肉は世界的な需要増などを背景に、価格が前年同期比で38%上昇した。コメも前年同期比で8%アップした。人件費については「人材確保のために、アルバイトの時給を1〜2%アップせざるを得なかった」(広報担当者)という。
松屋の牛めし並盛が320円となったことで、大手牛丼チェーン3社で提供される牛丼並盛は全て300円以上となった。
今回、価格改訂の対象外となった商品がある。それは「プレミアム牛めし並盛」(380円)だ。大盛や特盛は10〜20円値上げする。同商品は首都圏を中心に約580店舗で提供されている。プレミアム牛めしは牛肉をチルドの状態で店舗まで運ぶ必要がある。現時点で首都圏を中心に販売されているのは物流の制限があるためだ。現在、大阪や名古屋の一部店舗でプレミアム牛めしを試験的に販売している。今後も導入店舗は広げる方針だという。松屋では牛めしとプレミアム牛めしの併売はほとんど行っていない。今後、320円の牛めしは380円のプレミアム牛めしに置き換わっていく方向だ。
プレミアム牛めし並盛を値上げしなかった理由について、「松屋で一番売れている商品であり、お客さまへの影響を少なくするため」(広報担当者)と説明する。
実はすき家も2017年11月の価格改訂で「牛丼並盛」の価格を据え置いている。中盛や大盛を10円値上げした一方で、並盛は350円のままにした。すき家を運営するゼンショーホールディングスの広報担当者は「お客さまになるべく影響が出ないようにするため」と説明する。価格改訂後、既存店の客数は対前年同月比で微増を続ける。すき家は値上げによる影響を最低限に抑えている。
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