70周年“ブランドのコメ兵”が直面した「2つの危機」:石原卓児社長インタビュー(2/3 ページ)
中古ブランド品リユースでトップを走るコメ兵。今年で70周年を迎えた同社は、「2つの危機」に直面した。危機的状況をどう乗り越えたのか。石原卓児社長にインタビューした。
爆買いによる最高益、そして翌年の赤字転落
しかしその翌年、風は大きな“逆風”と変わった。爆買いブームが終息し、16年9月の中間決算では連結四半期純損失2800万円と株式会社化以降初の赤字に転落した。
石原社長は「僕もショックだったし、社員も非常にショックを受けていました。特にリーマン直後の苦しいコメ兵を知らない若い社員たちから、『本当に大丈夫ですか?』と不安そうな声をかけられましたね。エリアの責任者を集めても、『頑張ろう、心配するな』と声を飛ばすことしかできませんでした」と当時を振り返る。
このままでは危ない――そう判断した石原社長は、「止血」をすると決めた。軌道に乗っていなかった9店舗を閉店。その一方で、梅田、新宿、名古屋の好立地に大型店を出店した。
「不採算店を閉店することは守りの判断に見えますが、そうした店舗で店長をやっていたエース級の社員を、注力したい大型店に配置することができたのはプラスでした。彼らに対しては、止血して挽回するから頼んだ、という気持ちでしたね」
品ぞろえも切り替えた。爆買いの波が押し寄せていたとき、100万〜300万円の商品が売れることも多くなり、社内でもニュースになって盛り上がっていたほどだった。高額商品を売るモチベーションが上がり、ラインアップが充実する一方で、特に国内の消費者に人気の価格帯である10万円前後の商品は少なくなっていた。爆買いによって売り上げが伸びていた裏で、いつのまにか既存の客が離れていたのだ。
「爆買いに踊らされていた部分がありました。当時は『売れているからこれでいいんだ』『業界が伸びているのに、コメ兵だけが負けるわけにはいかない』『去年の自分たちに勝たなければ』という思いでいっぱいで、見えなくなっていた部分がありました。1回鼻を折られてリセットしたような気持ちです。コメ兵の強みを見直して、よくないところを1回切って、筋肉質に戻ろうと。できることを全部やって、丁寧に商売をしていったら、業績がよくなってきています」
関連記事
- 「承認されたい!」女性の欲望で育つシェア経済
日本ではやや遅れている「シェアリングエコノミー」。しかし、ファッションシェアリングの分野は成長中だ。ブランドバッグシェアサービス「ラクサス」から、女性をターゲットにしたシェアビジネスを探っていこう。 - コメ兵、ブランド品フリマアプリに参入 鑑定付きで不安解消
ブランド品リユース最大手のコメ兵がフリマアプリに参入。 - ブランド品特化「メルカリ メゾンズ」自動査定で簡単出品
フリマアプリ「メルカリ」の姉妹アプリ「メルカリ メゾンズ」が提供開始。ブランド品に特化し、自動査定で簡単に出品できる。3年以内に年間1200億円の流通高を目指す。 - 星野リゾート、ブランド作りの条件とは?
大阪・新今宮エリアに新たな都市観光ホテルの開業を目指すなど、その取り組みが注目を集めている星野リゾート。同社の経営トップである星野佳路代表に事業展望などを聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.