女子レスリングのパワハラ問題、一体誰が得をしたのか:赤坂8丁目発 スポーツ246(5/5 ページ)
一応の決着を見た。女子レスリングで五輪4連覇中の伊調馨が、日本レスリング協会の栄和人氏にパワハラ行為を受けていたと認定されたわけだが、この問題の背景に何があったのか。激しい覇権争いが見え隠れしていて……。
伊調のコメント、どんな意味が込められているのか
個人的には今回のパワハラ告発文が世に明らかになった直後、当の伊調選手が「(告発に)関与していない」と口にしていたにもかかわらず後にウヤムヤになったことが、どうしても引っかかっている。パワハラ認定を受けて、同選手は「アスリートファーストの確立を」というコメントを出したが、これに何か深い意味が込められているような気がしてならない。
伊調選手は告発状を提出したことで、栄氏のパワハラ行為だけでなく、自分の意思とは関係のないところにまで話が及んでいると感じていたはずだ。だからこそ、今回のようなケースが二度と繰り返されないように、今後はもっと競技者の考えや意見を反映させてほしいとの願いを込めて、あえて用いたのではないだろうか。
いくらパワハラを受けたとはいえ、栄氏は伊調選手にとってかつての大恩人だ。その元大恩人が告発されて地位も名誉も失い、キズをつけられることを伊調選手が望んでいたとはどうも考えにくい。そういう意味でも「アスリートファーストの確立」は日本女子レスリング界を含めスポーツ界全体に厳守してほしい。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ、2018年平昌)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
関連記事
- 卓球王者の張本が、いまひとつ支持を得られない要因
全日本卓球選手権の男子シングルス決勝で、14歳の張本智和が王者・水谷隼を破って優勝した。最年少優勝の偉業を達成したのに、いまのところ“張本フィーバー”は起きていない。なぜ新王者がいまひとつ支持されないかというと……。 - 大人たちによって作り上げられた“ポスト真央”、本田真凛の悲劇
オトナたちによって作り上げられた「悲劇のスター候補」だったのかもしれない。女子フィギュアスケートの本田真凛のことだ。期待されていた韓国・平昌五輪の代表入りを逃してしまったことで、今後の彼女はどうなる? - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。 - サラリーマンの味方「切腹最中」は、なぜ1日に7000個も売れるのか
お詫びの手土産として、多くのサラリーマンが購入する「切腹最中(せっぷくもなか)」をご存じだろうか。1990年に発売したところ、当初は注目されていなかったが、いまでは多い日に7000個以上売れている。「切腹」という言葉が入っているのに、なぜヒット商品に成長したのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.