自己中心的! “思惑”が見え隠れする「えこひいき」路線図:あなたの知らない路線図の世界(1/2 ページ)
路線図には企業が独自に作る「インディーズ」のものもある。特定の建物に案内するための路線図は、時として「誰をターゲットにしているか」といった思惑を浮かび上がらせることも……。
企業を訪問する前に、Webサイトで「交通アクセス」を確認しておく人も多いだろう。最寄り駅からの経路のほか、商業施設などは「車でお越しの方」「電車でお越しの方」と交通手段ごとに案内が記載されていることもある。路線図マニアとしては、この「電車でお越しの方」が見逃せない。企業が交通案内のために独自に路線図を作っている場合があるからだ。
例として、六本木ヒルズのWebサイトに掲載されている路線図を見てみよう。六本木ヒルズの最寄り駅は六本木駅と麻布十番駅。この2つの駅を中心に、路線図に載せる駅や路線を絞り、「六本木ヒルズに来るための路線図」に特化させている。
鉄道会社の路線図が路線全てを網羅するのに対し、企業の路線図は自分のところへ導くことを目的としている。このため、企業が作った路線図は「自己中心的」になりがちだ。その表現はときに「誰をターゲットにしているか」すらも浮き彫りにしてしまう。
六本木ヒルズの路線図で言えば、JRや地下鉄を絞りながらも空港アクセスを載せているのは、インバウンドを意識したものだろう。六本木や麻布十番を通らない都営浅草線(浅草〜大門間)をわざわざ描いているのも、浅草を訪れる外国人観光客を意識したものだと思われる。
ターゲットを絞る路線図・広げる路線図
先月末にオープンした東京ミッドタウン日比谷の路線図にも、成田空港や羽田空港が描かれている。こちらもインバウンドを意識したもの……とは思うが、六本木ヒルズと違って駅や路線に英語表記が無いのは少し気になる。
東京ミッドタウン日比谷の最寄り駅は日比谷、有楽町、銀座の3駅。他には新宿や六本木などが主要駅として掲載されているが、原宿や新橋などは乗換駅にも関わらず名前が無い。「本物を知る大人たちが集う街」というコンセプトから、ターゲット層の選択と集中を行った形跡がうかがえる。
一方、ターゲットを「絞る」のではなく、「広げる」方向で描かれた路線図もある。一年を通じてさまざまなイベントが開かれる幕張メッセは、千葉を中心に一都三県にわたる広範囲な路線図を掲載。また、味の素スタジアムでは東北新幹線や東海道新幹線が描かれており、地方からの「遠征組」も視野に入れたものになっている。
関連記事
- 小田急電鉄の路線図はどこが変わったのか
ダイヤ改正に伴い路線図を一新した小田急電鉄。リニューアルした路線図はどう変わったのか? 路線図マニアが読み解く。 - なぜ時刻表に“謎ダイヤ”が存在するのか
鉄道の時刻表を調べる際、スマホで検索している人が多いだろうが、実は紙の時刻表をじっくり見ると、興味深い情報がたくさんある。例えば、実際に走っていない特急が走っていることも。どういうことか。『JTB時刻表』の大内編集長に、謎ダイヤの真相を聞いた。 - 小田急電鉄の「戦略的ダイヤ改正」を読み解く
小田急電鉄は2018年3月のダイヤ改正を発表。4カ月も前に詳細を発表した背景には「4月から小田急沿線で新生活を始めてほしい」という意図がある。混雑緩和だけではなく、増収に結び付ける狙いだ。 - 東京都の「選ばれし6路線」は実現するのか
東京都は「平成30年度予算案」に「東京都鉄道新線建設等準備基金(仮称)」の創設を盛り込んだ。2016年に交通政策審議会が答申第198号で示した24項目のうち、6路線の整備を加速する。6路線が選ばれた理由と、選ばれなかった路線を知りたい。 - 6畳弱の狭い物件に、住みたい人が殺到している理由
6畳弱の狭い物件が人気を集めていることをご存じだろうか。物件名は「QUQURI(ククリ)」。運営をしているピリタスの社長に、その理由を聞いたところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.