あなたの個人情報、Facebookにこれほど吸い上げられている:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
Facebookの個人情報が不正に集められて米大統領選に使われたことが指摘され、騒動となっている。しかし、無料で利用できるFacebookやGoogleが個人情報を利用してビジネスをしていることは驚くことではない。どのようなデータが吸い上げられているかというと……
無料サービスにプライバシーはない
要するに、私たちはこうした情報が日々吸い上げられていることを頭の片隅に置きながら、便利なサービスを利用するべきだということだ。
筆者は以前、米国の著名な専門家2人に取材をして意見を聞いたことがある。『超監視社会』の著者で、著名な暗号・セキュリティ研究者であり、現在は米ハーバード大学法科大学院で講師も務めるブルース・シュナイアーは、そもそもIT企業などが個人データを追跡している事実は驚くことではないと述べている。その上で、「個人情報を追跡するのがFacebookやGoogleのような企業のビジネスモデルで、それはずっと変わらない。そうしたユーザーのプライベートなデータを商売に使って稼いでいるのですから」と語っていた。
また、著名な米サイバーセキュリティ専門家であるジェフリー・カーにも、ネットサービスとプライバシーについて話を聞いたことがある。カーは、「もはやプライバシーというものは存在しないということだ」と述べ、こう付け加えた。「ソーシャルメディアで全てを共有して、自らプライバシーを放棄しているのです」
Facebookのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)は最近、米NBCテレビのインタビューで、プライバシーが欲しいなら「有料のサービスになるだろう」と語っている。
そう、この言葉に全てが集約されている。サンドバーグはこのインタビューでも、Facebookがユーザーのプライバシーを利用して商売していることを認めている。完全な「プライバシー」を求めるなら、広告で稼ぐビジネスモデルでは無理で、サービスを有料化するしかない。それが唯一の答えなのかもしれない。
ただ有料で利用したいと思う人がどれほどいるのか。唯一の解決策に乗り出した時こそ、まさにFacebookの終わりの始まりだと言えるのかもしれない。今回の問題を受けて、Facebookがどのような方針を打ち出すのか注目だ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
関連記事
- 「民泊」解禁目前 “先輩”国で起きているトンデモ事件とは
6月の住宅宿泊事業法(民泊法)の施行を目前に控え、民泊に関するニュースをよく聞くようになった。民泊をすでに導入している“先輩”国で起きている出来事とは…… - 欧米メディアも報道できない、伊調馨「パワハラ問題」の真実
レスリング選手の伊調馨氏が日本レスリング協会の栄和人強化本部長からパワハラを受けているという告発があった問題。海外メディアはほとんど報じていない。後追い報道が続々と出てきて、騒動の本質がつかみづらくなっている。 - 民泊事件で使われた、出会い系アプリ「Tinder」の実態
兵庫県三田市の女性(27)を殺害したとして、米国籍のヴァシリエヴィチ容疑者が逮捕された。容疑者と被害者が知り合ったのは「Tinder(ティンダー)」というアプリだったそうだが、こうした出会い系アプリを使うことでどんな事件が起きているのか。海外に目を向けると……。 - 人気者になるために、フォロワー購入はズルいことなのか
TwitterのフォロワーやFacebookの「いいね」の数を大量に購入している――。米ニューヨーク・タイムズ紙が購入者を実名で明らかにしたが、こうしたズルい行為のどこに問題あるのか。私たちの生活には関係ないと思っていたら……。 - テレビに進出したユーチューバーはなぜ失敗したのか
米CNNが大きな失敗をした。大物ユーチューバーを取り込んで、新たなコンテンツを発信する予定だったが、うまくいかずに大コケ。なぜテレビ局とユーチューバーは融合することができなかったのか、その原因を探ったところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.