福田次官のセクハラ騒動で、まだ語られていない本質的な問題:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
福田事務次官のセクハラ騒動を受けて、さまざまな議論が起きている。「マスコミのパワハラ体質が問題だ」「任命した麻生大臣に責任がある」といった声があるなかで、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。どういうことかというと……。
システムエラーの正体
ここまで言えば、カンのいい方は「システムエラー」の正体にお気付きではないだろうか。そう、「記者クラブ」である。
ご存じのように、日本の警察、検察、裁判所、そして官省庁には、クラブ加盟社だけが優先的に情報にアクセスできる、記者クラブという制度がある。ここに加盟した記者は役所から横並びで情報がいただける。が、それだけでは、どこの新聞、どこのテレビもみな横並びになってしまうので、クラブ記者たちは役所が終わった後、官僚の自宅に押しかけたり、秘密裏に会食をすることで独自情報を得ようとする。
それこそが日本独特の「夜討ち」「朝駆け」という取材文化だ。
情報を持っている高級官僚に呼び出されたら即座にかけつける。ライバルよりも気に入られて、ライバルよりもディープな内部情報を得る。そういう熾烈(しれつ)な競争がクラブ記者の間で、日夜繰り広げられているのだ。
――なんて話をドラマチックに描くと、元新聞記者である横山秀夫さんの『クライマーズハイ』みたいになるが、ミもフタもない言い方をしてしまうと、なんのことはない、閉ざされた「ムラ社会」のなかでライバルを蹴落としながら、いかにしてムラの権力者からかわいがられるか、そして「えこひいき」をされるかという競争に過ぎないのである。
そう聞くと、「ん? なにか似てるな?」と思う方もいるかもしれない。高級クラブやキャバクラという、福田氏が「言葉遊び」を楽しむ店である。
ホステスさんたちは「店」という閉ざされたムラ社会のなかで、ライバルを蹴落としながら、支払いのいい「上客」の心をつかもうとする。そのために、心にもない営業トークをして、同伴やアフターに付き合い、「指名」という「えこひいき」を勝ち取っていく。「取材」と「接客」という違いはあるものの、やっていることの本質はなにも変わらないのである。
実はこれこそが、福田氏が女性記者を「お店の女性」のように扱った根本的な原因である。
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