福田次官のセクハラ騒動で、まだ語られていない本質的な問題:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
福田事務次官のセクハラ騒動を受けて、さまざまな議論が起きている。「マスコミのパワハラ体質が問題だ」「任命した麻生大臣に責任がある」といった声があるなかで、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。どういうことかというと……。
ハラスメントの温床
日本のメディア事情に疎いケイ氏はこれを安倍政権が怖いからだと勘違いしたが現実は違う。マスコミ記者は、選挙が落ちればただの人になる政治家などではなく、何十年も長い付き合いになる官僚から嫌われることを恐れて「匿名」にしたのだ。
名指しで、安倍政権を叩く記者は山ほどいるが、官僚組織や記者クラブを面と向かって叩くマスコミ記者がいないのがなによりもその証拠だ。
自分たちの労働環境の文句すら、面と向かって言えないから、自分が受けた「被害」を訴える人を見るとカチンとくる。なぜこいつは我々のようにじっとハラスメントを我慢しないのだと憎悪がこみあげる。
セクハラを受けたのだからまずは財務省に駆け込むべきだとか、テレビ朝日で報道できるように戦うのがジャーナリストだ、みたいなもっともらしい感じで、女性記者がバッシングされているのはこれが理由だ。
旧日本軍、相撲協会、レスリング協会などをみれば明らかだが、閉鎖された社会はハラスメントの温床となる。これ以上、「被害者」を出さないためにも、そろそろ記者クラブというまったく今の時代にマッチしない「ムラ社会的なキャバクラ」のあり方を見直すべきではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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