社会的地位の高い人がハラスメント対応に失敗する背景:ロジカル思考の落とし穴(1/2 ページ)
財務省の福田事務次官セクハラ疑惑が持ち上がったことで辞任した。米国のMeToo運動など、ハラスメントに対する意識が急拡大しているなかで、社会的に高い地位にある人がなぜ続々と「やらかす」のだろうか。
著者プロフィール:
増沢隆太(ますざわ・りゅうた)
株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役。キャリアとコミュニケーションの専門家として、芸能人や政治家の謝罪会見などをコミュニケーションや危機管理の視点で、テレビ、ラジオ、新聞等において解説している。大学や企業でのキャリア開発やコミュニケーション講座を全国で展開中。著書「謝罪の作法」他多数。
セクハラ疑惑が持ち上がったことで辞任に至った財務省の福田次官。米国のMeToo運動など、ハラスメントに対する意識が急速に大きくなった現在。トップ官僚だけでなく政治家、社長など社会的に高い地位にある人がなぜ続々と「やらかす」のでしょうか。
(1)ハラスメントの現状
人事コンサルティングの課題として、ハラスメント対応は昔からありました。私はクライアント先での相談だけでなく、専門誌や一般紙でのコメント取材などさまざまな場で人事課題としてのハラスメント対応について解説しています。
セクハラだけでなく、パワハラも深刻な問題となり、裁判や損害賠償など起こっています。一方で何でもかんでもハラスメントとレッテルを貼り付け、息苦しい社会になったという声も出るなど反作用も起きるくらいに、認知は広がっているともいえます。
職場の問題としてのハラスメントは昔から存在していました。ハラスメントの存在が急に注目されるようになったのは、その発生件数が増えたというよりは、存在が明らかにされることが増えたと考えるべきでしょう。SNSやインターネットをはじめ、被害者が情報発信する手段が圧倒的に増え、さらには社会もそうした声を拾い上げる体制が進んでいることが挙げられます。
(2)ハラスメントをロジカルにとらえるエリート思考
財務省トップの事務次官や大企業社長といった超エリートがハラスメントで糾弾されるのはなぜでしょう。大きな理由の1つはそうしたエリート層の「頭の良さ」が原因ではないかと思います。
社会的に成功した人々は学歴も高く、論理的思考に基づく判断力に優れている人が多いはずです。学歴が高いことが人間の価値ではないと言いつつ、いまだに学歴フィルターのような、学校名で就活学生を選抜する企業が存在するのも、受験の結果という成果が頭の良さを図る尺度として信頼されているからでしょう。
そういった受験の頂点に立つ大学を卒業し、社会においても成功を遂げた人たちですから、ハラスメントについてもロジカルに考えてしまいます。「証拠がなければ犯罪が成立しない」という考え方は極めて筋が通っており、言ったもん勝ちで騒ぎを起こすような理不尽な申し立てなどあり得ないということでしょう。セクハラでもパワハラでも加害者とされる側の言い訳はほとんど常に「そんなつもりはなかった」というものです。
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