社会的地位の高い人がハラスメント対応に失敗する背景:ロジカル思考の落とし穴(2/2 ページ)
財務省の福田事務次官セクハラ疑惑が持ち上がったことで辞任した。米国のMeToo運動など、ハラスメントに対する意識が急拡大しているなかで、社会的に高い地位にある人がなぜ続々と「やらかす」のだろうか。
(3)ハラスメントの取り扱い方
ハラスメントにおいて、加害側の意図は関係ありません。では冤罪含めて言ったもの勝ちではないかという反発がありますが、ハラスメントは単純に行為の有無だけではなく、心情の問題です。ある意味受け止める側の一方的な心情であることは十分可能性としてあり得ます。事実を争うというロジカルな思考では、こうしたデリケートな心情部分のような、あいまいで非定型な存在に対処できないのです。
これがエリートが踏んでしまう地雷であり、人間の心というロジックだけではとらえ切れないものへの対応の仕方が分からないゆえ事態を悪化させます。ハラスメントが問題になった後の対応を間違え、騒動をこじらせ、ついには辞任など大きなダメージにつながってしまう原因だと、私は考えています。
麻生財務大臣や財務省が「被害者が出てこい」と主張するのは、極めて論理的であるがゆえに全く問題解決につながらず、反発を強めて批判を大きくするだけになっています。ハラスメント対応は白か黒かの見極めをすることではなく、被害を受けたとされる側の心情をいかに救うかにあるからです。
(4)非論理的対応にも長けた人は?
証拠どころか形もあいまいな存在を扱うにはロジックだけでは無理なのです。実際にあった対処事例では、被害者側の話を何時間もしっかりと傾聴し、その過程を通じて気持ちが癒え、結果として騒動が収まったということもあります。「被害が本当にあったのなら証明しろ」という態度の逆です。
こうした論理を超えた人間の感情の機微を上手に対応できる人がいれば、深刻な辞退を少しでも改善できるかもしれません。そもそもの原因となった事象においても、相手の心情をもう少し思いやることができれば、問題そのものが起きていなかったことでしょう。感情のような非論理的存在をもしっかり向き合えたのは、エリートというより苦労人の創業者だった人に多いようです。
松下幸之助が松下電器の労組結成式に登場して祝辞を述べたり、田中角栄が落選した議員に土下座をして生活資金を届けたといったエピソードは、すべて効率や論理ではない感情をつかむことに長けたリーダーシップだったと思います。今の自民党や中央官庁にはいないのだろうかと思いつつニュースを見ました。(増沢隆太)
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