スシローの進化についていけなかったかっぱ寿司:1人負けした理由(5/5 ページ)
かつて業界をリードする立場だったかっぱ寿司が、競合他社に次々と追い抜かれている。逆転を許してしまった背景にはいったい何があるのだろうか。
顧客満足度を高める取り組み
かっぱ寿司が苦戦している背景にはマーケティング戦略の差もある。かっぱ寿司が店舗に並ぶ時間を短縮する「かっぱ寿司アプリ」を導入したのは17年3月で、総ダウンロード数は100万件を超える(18年3月時点)。一方、スシローが同様の「スシローアプリ」を導入したのは15年4月で、ダウンロード数は850万件だ(18年2月時点)。一度、店舗に行って長時間待たされた客の満足度は低下し、二度と来店しなくなるリスクがある。
将来へのリスク対策についてもスシローはかっぱ寿司の先を行く。回転すし業界にとってのリスクは、原材料費と人件費の高騰だ。スシローグローバルHDの17年9月期決算説明資料には戦略施策として、原料高騰のリスクに備えた「上流進出の更なる進化」や、高騰する人件費対策の「更なる機械化・IT化」といった説明が並ぶ。飲食店の経営コンサルティングを手掛けるスリーウェルマネジメントの三ツ井創太郎社長は「スシローは、将来のリスクになりうる原価高騰や人件費高騰への取り組みについて具体的な対策を挙げている。経営課題解決に向けたアクションプランを全社的なプロジェクトとして取り組んでいると評価できる」と語る。
スシローの取り組みと比べるとかっぱ寿司が17年3月期決算説明資料で掲げた各種施策はどうしても見劣りしてしまう。こういった姿勢の差が、両社の明暗を分けたのではないだろうか。
かっぱ寿司は巻き返せるか
かっぱ寿司は17年6月に食べ放題キャンペーンを実施したり、丼ものを投入したりと必死の巻き返し策を展開している。前述したように原価率を上げるのも「良いものを安く」という基本に立ち返っている証だといえよう。
ただ、残念なことに競合の次の一手が早すぎた。かっぱ寿司がここまで“負けて”しまったのは、スシローをトップとする競合のスピードについていけなかったことが原因だろう。
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