JRの“大回り乗車”で房総半島1周 海を眺めて名物駅弁を食べる:杉山淳一の「週刊鉄道経済」GW特別編(4/7 ページ)
JRの大都市近郊区間のみを利用する場合の「特例」を利用して、大回り乗車を楽しむ旅。今回は房総半島方面に向かう「海編」。
大網駅で外房線に乗り換える。東金線のプラットホームと外房線のプラットホームが離れているけれど、東金線と外房線の下りプラットホームは渡り廊下でつながっており、階段の上り下りはなし。特急わかしおを見送って、次の快速列車、上総一ノ宮行きに乗った。すぐに海は見えないけれど、住宅街にこいのぼりとツツジが見え隠れする。上総一ノ宮に到着すると、さらに先へ行く列車が待っていた。5分後に発車する。とてもスムーズだ。大原駅はいすみ鉄道の起点。旧国鉄のディーゼルカーが走ったり、ムーミンが描かれた列車があったり。楽しい路線だ。この時間は列車の姿がなかった。ちょっと寂しい。
御宿を過ぎると、やっと車窓に海が現れる。初夏の海。外房線は房総半島の外側、つまり太平洋側で波は高く、内房線は房総半島の内側、つまり東京湾側で波は小さい。だから、外房線の特急は「わかしお」、内房線の特急は「さざなみ」と名付けられた。でも今日は外房の海も穏やかだ。そしてこの区間、反対側の車窓も新緑が美しい。
子どもの頃、山の絵を描くときは緑色一色で塗りつぶした。でも、列車の旅を始めた頃に、山の緑は濃淡取り混ぜた模様だと気付いた。海も同じで青一色ではない。都会育ちの悲しさだ。山は緑、海は青と思い込んでいる。自然に恵まれた土地に育った子は、はじめてクレヨンを使ったときから気付いていただろうか。
午後0時19分に安房鴨川駅に到着。外房線と内房線の境界だ。ここでの乗り継ぎは約50分。駅から外に出られないし、どうしようかと思ったけれど、内房線の列車がすぐにやってきて車内で発車を待てた。ここで駅弁タイム。昼飯にしよう。万葉軒のJUMBOカツ弁当だ。名物駅弁「トンかつ弁当」の大盛り版である。
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