トヨタ社長が強調する「原点回帰」 激変期に打ち出す“トヨタらしさ”とは:決算は過去最高更新(2/3 ページ)
トヨタ自動車の2018年3月期決算は売上高、純利益ともに過去最高を更新。一方、豊田章男社長は原点回帰を強調。トヨタ生産方式(TPS)と原価低減で「トヨタらしさを取り戻す」と話した。その真意とは……
未来を生き抜くための「原点回帰」
豊田社長は18年3月期を「筋肉質な経営体質に変えて、新しい勝負ができる体制が整った」と振り返った。そして今期以降、人の移動に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティーカンパニー」として変革していく方針を掲げる。「100年に一度の大変革期を大チャンスとして捉え、自分たちの手で未来を切り開いていく」と力を込めた。
そのために重視するのが「原点回帰」。「トヨタの強みは、TPSと原価低減。お家芸ともいえるこの2つを徹底的に磨くことは、今を生き抜くだけでなく、未来を生き抜くためにこそ必要だ」
例えば、TPSの代表的な考え方の1つである「ジャスト・イン・タイム」。「必要な時に、必要なものを、必要なだけ作る」という考え方は、これからの時代にも求められる。コネクティッド技術がさらに進歩すると、顧客ニーズを先取りし、個人に合ったサービスを、リアルタイムで提供することが当たり前になる。それは、メーカーだけでなく、販売店やパートナー企業全てに必要な考え方だ。
また、商品の価格を決めるのは市場と客。利益追求のためにメーカーができることが原価低減だと考えている。豊田社長は「(自動運転技術などの競合となる)テクノロジー企業は積極的に投資している。原価低減の力に磨きをかけることで“稼ぐ力”を付けて、新分野への投資を強化していくことが必要だ」と説明した。
このような取り組みは長年トヨタを象徴してきたが、豊田社長は「全ての従業員が理解できているわけではない」と指摘する。「生産現場の取り組みというイメージが強い。しかし、他の職場であっても、トヨタマンである以上は腹で理解する必要がある」
今、「トヨタらしさを取り戻す闘い」に挑む理由は未来を生き抜くため。今期はトヨタにとって、そんなメッセージを発信し続ける時期であるようだ。
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