現場から見たトヨタ生産方式 トヨタ副社長インタビュー(1):池田直渡「週刊モータージャーナル」【番外編】(1/4 ページ)
トヨタ生産方式は、世界のビジネスに多大な影響を与えた生産メソッドだ。トヨタ生産方式の重要な原点の1つに「にんべん」の付いた自働化とカイゼンがある。ロボット時代の自働化とカイゼンとは果たしてどんなものなのか?
トヨタ生産方式は、世界のビジネスに多大な影響を与えた生産メソッドだ。トヨタ生産方式の重要な原点の1つに「にんべん」の付いた自働化とカイゼンがある。
ロボット時代の自働化とカイゼンとは果たしてどんなものなのか? 生産現場から叩き上げで副社長まで上り詰めた河合満氏に話を聞いた(以下、敬称略)。
<参考>前回記事:トヨタの改革に挑む叩き上げ副社長
トヨタの自働化
池田: 先日の第3四半期の決算発表で、習字の話を伺ってなるほどと思いました。トヨタでは「にんべん」の付く自働化と言いますよね。トヨタ自身の説明によれば、
『自働』とは、機械に善し悪しを判断させる装置をビルトインした機械であり、『自動』は動くだけのものです。機械を管理・監督する作業者の動きを『単なる動き』ではなく、ニンベンの付いた『働き』にすることが『自働化』を意味します。『異常があれば機械が止まる』ことで、不良品は生産されず、ひとりで何台もの機械を運転できるので、生産性を飛躍的に向上させることができました
と説明しています。トヨタの生産現場の基本となるのはこの自働化だと思うのですが、自働化をより効率化させていくためにどんな取り組みを行っているのでしょうか?
河合: われわれは自働化して同じものを効率良く作ることが大事だと思っています。今後の社会の少子高齢化も含めて自働化をより一層進めなくてはなりません。進化させるというのは、作業を単純にするとか、生産機械の台数を減らすとか、いろいろなものが作れるようにフレキシブルにするとか、さまざまな進化があります。いくつか具体例を挙げましょう。
池田: お願いします。
河合: 良い例が田原のバンパー塗装のラインです。これまで8台のロボットを使って1本のバンパーを塗装していました。それが先週行ったら「4台にします」と言うわけです。ちょうど近くに生産技術の役員がいたので「何だお前、余分なロボットを入れやがって」と言ってやったのです。
ボクはもちろん承知で言ったんですよ。それまでは塗り方の制約があったり、技術も進化していなかったりで、8台でやっと1本塗る状況でした。それがベストだったんですよ。それに疑問を抱かずにそのままやってたらずっと8台だったわけです。
でも、技能工の連中がもっと効率良く塗るやり方を考えると、ロボットの稼働時間が減ってきます。減った稼働時間を全部足してみると4台でもできるかもしれない。それから塗料だって吹いている塗料の60%から70%しか素材に付かないんです。後は下へ吸い込まれて消えちゃうんです。もし塗料が100%近く付いたら、20〜30%も材料費が安くなる。無駄吹きした塗料は下に水が張ってあって、そこに溜まるんですが、それだってしょっちゅう掃除しなくて済む。そのためにものすごく精度の良い塗装ガンも当社の中で開発しています。
しかし、こういう効率カイゼンは設備だけでなく吹き方がより大事です。技能工の人間が一番良い吹き方、角度をうまく保ちながら一筆書きで吹くと、塗料の消費量は少なくなるのです。もう1つはガンのエア圧を強くすると吹き返しが来るので、そこも圧力をいろいろと工夫して、塗着効率を上げられます。塗料の付きが良くなれば塗装に必要な時間が減ります。そういう細かな積み重ねで作業時間を削っていくと、塗装ロボットの台数を4台にできる見通しが立ってきました。
池田: なるほど、小さなカイゼンを積み重ねてコツコツとやっていくわけですね?
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