なぜパタゴニアはトランプ大統領に「宣戦布告」したのか:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
米アウトドア用品大手パタゴニアのマーカリオCEOがトランプ政権について「最低だ」「信じられない」と発言し、話題になった。なぜ対立しているのか。背景にある、米国の企業文化とは……
トランプ政権に「宣戦布告」
パタゴニアは17年12月、トランプ政権に対して「大統領が私たちの土地を盗んだ」というキャンペーンを開始した。その理由は、トランプが発表した方針にある。
トランプはユタ州にあるナショナル・モニュメント(国定記念物)指定保護地域2カ所で、保護地域の範囲を大幅に縮小すると発表。そして2月2日には、ベアーズ・イヤーズ地域の保護区が実際に約84%縮小され、グランド・ステアケース・エスカランテ地域も約47%縮小された。
この決定がなされた12月、パタゴニアはトランプとジンケ内務長官、農務長官、土地管理局の局長、森林局の局長を訴えた。パタゴニアの主張は、法律によれば大統領には国定記念地域を指定する権限はあるが、削減・縮小する権利はない、というものだ。また、この指定範囲縮小の本当の理由は、政府による天然資源の採掘にあると指摘。縮小により、石炭なら114億トン、ウランは50万トンが得られ、9万エーカーで石油または天然ガスの採掘の可能性があるという。そしてこの事実を政府は明らかにしておらず、うそをついている、とも批判している。
この「宣戦布告」に、下院天然資源委員会が反撃。Twitterでパタゴニアを批判し、その後にパタゴニア製品の不買を示唆するような情報が出てくるなど大騒動になった。
ただ皮肉なことに、この一連の騒動の「おかげ」なのか、パタゴニアの売り上げはこれまで以上に好調になっているという。実はこれまでの奇抜なキャンペーンも売り上げ増に貢献してきた実績を、パタゴニアはよく分かっている。11年のフリース不買キャンペーンの後、12年は売り上げがそれまでより30%も増えている。16年のブラックフライデーでも、パタゴニアは1000万ドルを売り上げ、店舗の売り上げは76%も増えたという。さらにブラックフライデー前後数日でFacebookのフォロワー数が6万人増え、オンライン購入者の70%は新規購入者だったと報じられている。
環境保護の活動がパタゴニアの売り上げに貢献していることは間違いなさそうだ。また今回問題になっている国定記念地域についても、国定公園などと関係が深いスポーツのクライミングなどに関連する製品は、パタゴニアのビジネスに貢献している。今回の訴訟は、そんなビジネス的な動機があるとの批判も一部で聞かれる。そうしたビジネスの売り上げ増が、パタゴニアの環境保護活動の本当の動機なのかどうかは定かではないが、そう見る向きもあるということだ。
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