2015年7月27日以前の記事
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ラフプレーと財務職員自殺 “服従の心理”の末路河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)

日大アメフト部のラフプレー問題で、選手が監督やコーチの指示に逆らえなかった心情を語りました。悪いことだと分かっていても、権力者の命令に従ってしまう。その心理は誰にでも働く可能性があり、50年以上前の実験でも明らかになっています。

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「命令通りやっている」という気持ち

 ここでポイントとなるのが、教師役の隣に座る「監視」役です。監視役は「白衣を着た権威のある博士らしき男性」で、教師役はこの監視役に実験の中断を申し出る必要があります。

 ところが実際には、教師役が中断を申し出ると、監視役は感情を全く乱さない超然とした態度と低い声で、次のように通告するように決められていました(教師役は知らない)。

「お続けください」

「続けることが絶対に必要です」

「迷うことはありません。続けるべきです」

「罰の効果を見る実験なのですから、続けなくてはなりません」

 生徒役が電気ショックで苦しむ姿を見かねて「実験中止」を申し出る教師役に、強硬な態度で心理的プレッシャーをかけ続けたのです。

 その結果、なんと教師役となった一般被験者の62.5%が、途中で実験を中断することなく、最大の450ボルトになるまで電気ショックを与え続けました。目の前で生徒役が絶叫しているのに、「続けなさい!!」と監視役が無表情で繰り返すと、再び実験を続行したのです。

 何人かの教師は「実験協力費を返すから止めさせてくれ!」と訴えましたが、権威のある博士らしき男が、「私たちの指示に従えば良いのです。実験の責任者は私たちです」と実験続行を強要すると、再び実験を再開しました。

 「悪いことだと思いながらも、権力(=監視役)に服従してしまうのは、『自分はちゃんと命令通りやっている』という満足感が、『生徒を痛い目に遭わせている』という罪悪感を上回るからだ」。ミルグラム博士は、おぞましい行為を続ける教師役の心情を、こう説明しました。

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悪いことだと思っていても、権力者に服従してしまう心理がある

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