「北斗の拳」に「銀河鉄道999」 マンガとコラボした広告の意外な効果:コンテンツの潜在力に注目(2/3 ページ)
マンガとコラボした広告を戦略的に使う企業が出てきた。想定以上の成果を上げているところもある。どのような狙いでマンガとコラボしているのだろうか?
マンガ家と交渉するのはベンチャー企業
銀河鉄道999とRIZAPのコラボキャンペーンには、ダブルエル(東京都品川区)というベンチャー企業が関わっている。同社は日本のマンガやアニメといったコンテンツを国内外に展開する事業を手掛けており、保手濱彰人社長によると、国内において400人を超えるマンガ家とのネットワークを構築している。
ダブルエルは自らマンガを使った広告企画を立案し、クライアントに直接営業している。例えば、バイク関連の企業にはバイクのマンガを使った広告を提案するといった具合だ。クライアントが興味を持てば、商品やサービスにあわせたマンガと露出方法を提案する。話が固まってきたら、著作者への許諾をとる作業などを行う。広告代理店からマンガを使った広告の相談を受けて、「このキャンペーンにはこのマンガ家さんが向いていますよ」などと提案することもある。
ダブルエルの強みはネットワークだけでなく、実際にマンガ家とギャラや露出方法に関して交渉するノウハウがあることだ。
同社取締役の鈴木雄大氏はマンガ家と直接交渉するときの注意点を次のように説明する。
「『お金のことはまったく構わない』という方から、ビジネスライクにきっちり進める方までさまざまです。マンガ家の皆さんはご自身の作品を非常に大切にされています。私たちとしても各作品を単なる商品としてではなく、それぞれ最大限の魅力を発揮できるように丁寧に扱い、発信していくよう努めています」
マンガ家とのコネクションや、付き合い方のノウハウはどこで得たのだろうか。同社取締役の鈴木雄大氏は、コンテンツの電子化などを手掛けるイーブックイニシアティブジャパンを創業した鈴木雄介氏(現名誉会長)の息子だ。鈴木雄介氏は大手出版社に勤務していたが、マンガコンテンツを電子化したいという強い思いから会社を退職し、イーブックイニシアティブジャパンを立ち上げた。コンテンツを電子化するためにマンガ家を説得してまわったときのノウハウや知り合いのマンガ家人脈を引き継いだ。
鈴木雄介氏から紹介された数名のマンガ家と、保手濱社長がもともと知り合いだったマンガ家が同社の国内事業の原点だ。親しくなったマンガ家から知り合いのマンガ家をさらに紹介してもらう形で、2年かけて着々とネットワークを広げていった。
コラボの話を聞くと「面白そうだ」と前向きな姿勢を示すマンガ家は多くいるという。ダブルエルのようなベンチャー企業の登場は、マンガとコラボした広告の可能性を広げるだろう。
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