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赤字の海外事業を立て直したサイゼリヤの「たたき上げ役員」海外に約370店舗(5/5 ページ)

サイゼリヤは中国やシンガポールなどの海外6法人で約370店舗を運営している。同社の利益に大きく貢献する存在に育った海外事業だが、進出当初は赤字に苦しんだ。その事業を立て直したのはサイゼリヤ一筋で働いてきた「たたき上げ役員」だった。

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店長時代にかいた汗

 益岡部長が主導した一連の改革が成功した要因は、現地社員とのコミュニケーションを大切にしたことだ。相手の立場も尊重しながら、自分の伝えたいことを理解してもらう姿勢が培われたのは、サイゼリヤの店長時代だと本人は分析する。

 益岡部長はサイゼリヤの創業間もないころから学生アルバイトとして働き、25歳で初めて店長になった。それから新店の店長を何度も任されてきた。当時の苦労をこう振り返る。

 「縁もゆかりもないエリアに出店しても、宣伝するお金もなかったのでお店の認知度が低く、来店数が増えませんでした。いくら『安くておいしいですよ』と言っても、よそ者は信用されません。地域の人たちに信頼されるためにさまざまな工夫をしました。例えば、ショッピングセンター内の店長をしていたときは、毎朝、同じエリアにいる店舗の方々にあいさつをしてまわりました。ロードサイドの店舗で働いていたときは、お店の制服を着て店舗以外の場所を掃除する姿をあえて見せるようにもしました。

 中国の現地社員にとって、私は『日本から来たよそ者』です。益岡という人となりを知ってもらうために、信頼関係を大切にしたことがよかったのかもしれません」

 また、益岡部長は幹部となる人材を育成し、定着させるために自身の苦労話も交えながら「今はつらいこともあるが、一緒に頑張ろう。そうすれば給料だって増やせるし、日本への研修旅行もできる」と話しているという。

 益岡部長はサイゼリヤ一筋の「たたき上げ」役員で、もうすぐ60歳になる。店長時代にかいた汗が、現地社員を説得する言葉に力を持たせたのだろう。

 中国事業における目標は、約370店ある店舗数をマクドナルドやケンタッキー・フライド・チキンのような数千店規模にまで増やすことだ。そのためには、現状の人事制度を現地社員により支持されるようブラッシュアップしたり、ブランド戦略を見直したりすることが課題だという。

 日本発のイタリア料理チェーンが中国市場を席巻する日がくるために、もう1つ上の奮闘を期待したい。

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取締役海外事業本部長の益岡伸之氏
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