ヤン・ウェンリーが込めた思い 組織のためではなく、自分のために働け:銀河英雄伝説からビジネスリーダーは何を学ぶべきか?(2/3 ページ)
SF小説「銀河英雄伝説」は組織の戦略や戦術などが深く学べるとあって、バイブルにしているビジネスパーソンも多い。本連載では、作品に登場するさまざまな名言を題材に、現代のビジネスシーンや企業組織にどう落とし込んでいくのかを考えていく。
また「勝つための算段はしてあるから無理をせず気楽にやってくれ」という発言は、将としてあるべき姿を表しているでしょう。
極め付きは、「かかっているのはたかだか国家の存亡だ。個人の自由と権利に比べれば大した価値のあるものじゃない」という発言です。
順に考えてみましょう。戦略を考えるのは現場ではなく将として当然の姿であり、こういった将の下で活動できる人たちは組織が役割で成り立つことを理解し、それぞれの持ち場で生き生きすることでしょう。
また、私たちはさまざまなコミュニティーの中でいきています。国家はその最大規模クラスのものであり、それより小さなコミュニティーとして組織があります。もちろん、米Googleの親会社である米Alphabetや、米Amazonなどの組織は既に国家を超えた影響力を持っているとも言われていますが、国家も組織もコミュニティーの単位であることには変わりありません。
人が生きるにあたり、ほとんどのケースで何らかのコミュニティーに所属します。中でも会社組織は働き出してからの人生の大部分を占めることになる人も多いはず。そうなると、各人の考え方や価値観などはその組織をベースに構築されると言っても過言ではないでしょうし、少なからず影響を受けるのは事実です。そして、コミュニティー選択の自由度が低い、または流動性が乏しければ、人々の価値観や提供価値が固定化されることも多く、場合によってはそれがすべてになってしまうほど、価値観の中心に企業組織が据え置かれることすらあります。
ただし、順序を間違えてはいけません。人間は国家や組織がなくても生きられますが、人間なくして国家や組織は存立しません。重要なのがどちらなのかは明らかですね。
国家のために、組織のために働く。それ自体はきっと素晴らしいことでしょう。しかし、これらを踏まえて考えると、国家や組織などはただのコミュニティーの1つにすぎません。ヤン・ウェンリーの言うように、個人の自由と権利に比べれば、大した価値のあるものではないのです。だからこそ、広義の意味で、自分のために働くべきだと私は考えます。
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