残業手当はすぐになくしたほうがいい カルビー・松本会長:「プロ経営者」インタビュー【後編】(3/3 ページ)
日本を代表する「プロ経営者」として、さまざまな経営改革を推進してきたカルビーの松本晃会長兼CEO。働き方改革にまつわる日本企業の問題点について、真っ先に「残業手当」を挙げる。
AI時代にどう生きるか?
――時代の変化と言えば、AI(人工知能)やロボットも職場で活躍するようになっています。そうした時代にビジネスパーソンはどうあるべきでしょうか?
AIやロボットができないことを人間はやるべきです。今時の工場はロボットが入っているから人間の出番はありません。永久にないでしょう。いずれ同じことがオフィスでも起きます。従って、ロボットができることはロボットにやらせれば良くて、人間は彼らができないことをやるしかないでしょう。
――それは、例えば何でしょうか?
まったく新しいことです。イノベーションというのは、いきなり明日からAIやロボットにやらせるのは無理でしょう。どんどんAIが侵食する可能性はありますが、彼らですべてできるかというと、決してそうではありません。
人間の歴史はずっとそう。数万年前は道具もなかった。産業革命が起きて人間がいらなくなったかというと、そんなことはないですよね。
僕はAIやITなど詳しくないけれど、それによって新しい世界が来たら、きっと人間ができることも新たに出てくるに決まっています。
――取って代わるのではなく、人間にしかできないことはまだまだあると。
それが何なのかは、その世界に行ってみないと分からないですよ。けれども、結果的に良いことなのです。進化しているのだから。それが人間の歴史。
しかしね、なぜ日本にはAppleやGoogle、Alibabaのようなイノベーティブな企業が少ないのでしょうか。その1つの理由は、昔からやってることをいつまでもやめないからです。それをやめて、新しいことをどんどんやるべきです。今ある仕事をしながら、新しいことを考えるなんてことできませんよ。今あるものを早く捨てたらいい。捨てたらどうなるか? そんなの捨ててみないと分からないですよ。
――捨てる前から、AIに乗っ取られるなど、あれこれ言っていても駄目ですよね。
その思い切りの勇気が欠けてるんですよ。
――だからイノベーションが起きない。
それを上手にやっている会社が日本にないわけではありません。ただ少ない。本当に大きく事業成長したところはほとんどいないです。GoogleやAlibabaを見て、それは米国人や中国人にしかできないと思いますか? そんなことはないです。日本人でも気の利いた人であればきっとできるのです。
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