プロ野球界の人材登用に風穴 DELTAがビジネスマンなどに向けたセミナー:門戸を開く(1/2 ページ)
野球データ分析を専門とするDELTAが、プロ野球の球団フロントなどを講師にしたセミナー「リーダーズ・オブ・ベースボール・オペレーションズ」を開催している。そこにはビジネスパーソンや学生などが多く詰め掛けているのだ。
プロ野球界の“狭き門”が変わろうとしている。
といっても選手のことではない。球団運営に携わるフロント人材のことである。野球データ分析を専門とするDELTAが、プロ野球の球団フロントやデータアナリストなどを講師にしたセミナー「リーダーズ・オブ・ベースボール・オペレーションズ」を開催中である。そこには金融やIT、商社といった企業で働くビジネスパーソンや、スポーツビジネスの仕事を志す学生など30人以上が詰め掛けているのだ。
人材不足は球界全体の課題
これまではプロ野球の仕事に就きたいと思っていても、球団による一般募集はほとんど行われていなかった。たいていが元プロ野球選手の採用だったり、親会社からの出向だったりとルートが限られていた。
そうすると何が起きるのか? 当然のように多種多様な人材が集まらず、流動性も失われてしまう。何よりもビジネス経験が豊富でスキルの高いスタッフが不足するという事態に陥るのである。
海外スポーツに詳しい人ならご存じだろうが、米国や欧州ではスポーツチームのGM(ゼネラルマネジャー)をはじめ、フロントには一流のビジネスパーソンを据えていることが多い。例えば、米メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースで編成本部長を務めるアンドリュー・フリードマン氏はウォール街の投資銀行に勤めていた経歴を持つ。
「プロ野球の球団といっても企業と同じように経営が必要だ。戦略を立てたり、選手を含めたスタッフ人事を考えたり、コストを管理したり。チームを強くするためには高いビジネススキルが求められる」と、DELTAで戦略アドバイザーを務める上田顕氏は説明する。
一昔前と異なり、チームが強くなるためには、戦略・戦術立案に代表されるベースボール・オペレーション(チーム運営)がより重要になっている。これに伴い、業務を担うデータの扱いに長けた人材が注目されているが、日本の野球界においてそうした人材は圧倒的に不足しているのが現状だ。
今までのやり方だと人材は集まらないし、育てることも難しかった。そこでDELTAが各球団に呼び掛け、プロ野球界全体でこうした課題の解決に取り組むこととなったのだ。
もちろんすべての球団が賛同したわけではないが、講師陣の顔ぶれを見ると、現在も第一線でフロント業務にかかわっている者が多いのが分かるだろう。それだけ問題意識が強いと言えよう。「プロ野球の現場で実際に仕事をしている人たちがこれだけ集まって、公に情報発信するような場は今までなかった」と上田氏は強調する。
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