フォーミュラE参戦に見る「仁義なきEV主導権争い」:本気の日産 不参戦のトヨタ、ホンダ(5/5 ページ)
「電気のF1」と呼ばれ、電気自動車推進のツールとなっているフォーミュラE。メルセデス、BMW、アウディの「ドイツ御三家」などが参加する一方、日本勢のトヨタ、ホンダは不参加。そこで繰り広げられる「EV主導権争い」の実情とは――。
やる気満々の日産
日産については、日産とルノーの2社のアライアンスを考えると、電気自動車「リーフ」でEV市場を引っ張ってきた日産が参戦した方が自然だと誰もが考えるだろう。日産の広報は「EVの先駆者として、走りの楽しさを見せていきたい」と、参戦によるアピールに期待を寄せていた。また、「競争力のある存在でありたい」(同前)とも語り、参戦するからには絶対に勝ちに行くという強い意気込みが感じられた。
参戦体制として、日産やNISMO(ニスモ)のほか、ルノーからもエンジニアを集めている。カルカモ・ディレクターは「マーケティング、テクニカル、レースオペレーションなど、いろいろなチームがありますから、いかに密なコミュニケーションを取れるかが鍵でしょう。レースの翌日は毎回、反省会を開きたいと思う」と柔和に答えたものの、その目は真剣そのものだった。
「リーフは世界で累計30万台以上が売れました。ルノーと日産の、CO2を排出しないゼロ・エミッションの走行距離は、トータルで40億キロ以上にも上ります。このデータは間違いなくレース用の部品などにも応用できます」と自信を見せた。
「若者のクルマ離れ」を防げるか
フォーミュラEは市街地のコースで実施され、EVは街乗りに向いている。赤井氏がインタビューの最後に語った「少なくとも軽自動車を、全てEVにすればいいと思いますけどね」との言葉は印象的だ。
日本で「若者のクルマ離れ」が叫ばれ始めて久しい。ただ、それは都市部だけの話にすぎない。地方ではまだまだ自動車なしには生きられず、だから「クルマ離れ」はそれほど深刻ではない。それでも自動車の販売が減っていくのは、人口減少や都市部の住環境が原因だ。加えて、「失われた20年」によって実所得が増えない事情に起因する「買い替え需要の縮小」も挙げられる。
EVでレースをすることによって、競争原理が働き技術進化が加速する。コモディディ化も進むことになる一方、うまく市販車にフィードバックをすることができれば、車両本体の価格も下げられる。それは、消費者にとっては自動車が買いやすくなることを意味する。フォーミュラEの観戦者は平均年齢が27歳であり、若者が好むSNSとの親和性も高い。フォーミュラEで勝つことができれば、若者に対して訴求力も向上する。そうすれば、EVにシフトすることはもちろん、同時に「若者のクルマ離れ」への歯止めにもつながるだろう。
関連記事
- メルセデス・ベンツ、新型「Gクラス」国内発表
メルセデス・ベンツ日本が「Gクラス」の新型を国内発表した。 - あなたはカローラの劇的な変貌を信じるか?
カローラ・ハッチバックのプロトタイプ試乗会のために富士スピードウェイの東コースへ訪れた。そこで目の当たりにしたのはカローラの劇的な変貌だった。 - ようやく発表されたトヨタとスズキの提携内容
ここ数年、トヨタはアライアンス戦略に余念がない。自動車メーカーやサプライヤーにとどまらず、IT業界やサービス産業、飲食業など異分野との協業関係を構築している。こうしたトヨタの変化に敏感に反応したのがスズキの鈴木修会長だった。 - 「セダンを大切にしている」 マツダの「アテンザ」大幅改良
マツダは、主力モデル「アテンザ」(セダン・ワゴン)を大幅改良。スポーツタイプ多目的車(SUV)の需要が拡大する中、フラッグシップセダンの新型アテンザを投入し、顧客層の再拡大を狙う。 - 純利益2.5兆円のトヨタが持つ危機感
トヨタの17年度決算は、売上高、営業利益、営業利益率、当期純利益の全ての指標で前年比プラスであり、車両販売台数もグループ全体でプラスと見事な数字に見える。しかしながら、それは前年決算の数字が悪かったことに起因するのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.