マツダの意地を賭けたCX-3の改良:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
マツダのCX-3が大幅な変更を加えられて登場した。主査も意地を賭けての商品改良である。どのように変化したのだろうか。
CX-3が大幅な変更を加えられて登場した。主査もマツダも意地を賭けての商品改良である。
乗り心地の課題とは何だったのか?
この記事がマツダの社内で物議を醸したと聞く。というのも、どうもこの評価、筆者とマツダの偉い人たちの意見がほぼ一致していたらしいのだ。社内の役員試乗会で受けた指摘と同じ。では、なぜそのまま出てしまったんだと思う読者も多いだろうが、その主たる原因はタイヤにあった。サスペンション全体がブルブルするのはタイヤの縦ばねがクルマと合っていなかったからだ。さすがにそのタイミングでタイヤを再開発しようとしても時間的に如何ともし難く、可能な範囲で必死の対策を追加しつつ、熟成不足のまま発売せざるを得なかった。
そんな経緯はつゆ知らず、筆者は乗り心地が悪すぎると書いた。偉い人は「言わんこっちゃない!」と怒り、主査はそれから臥薪嘗胆の日々を送ることになる。書いたことはウソではないので、そこを詫びる気はない。マツダの人からも記事についてわざわざお礼のメールをいただいたので、前向きに受け取っていただいてはいるけれど、それでも担当するエンジニア諸氏にとって大変な日々であったことは想像に難くない。眠れない夜もあったろう。
背景にはそういう話があっての商品改良である。当然、マツダはプライドを賭けてCX-3を仕上げてくる。筆者は試乗会に行くにあたり、少々お腹が痛くなった。ホントに頼むからいいクルマに仕上がっていてほしい。どんな事情があれ、ダメならダメと書くしかない。読者あっての書き手である。
小さな高級車と第2世代シャシー
さて、CX-3にはデビュー時から大きな期待がかかっている。1つはBセグメントのSUVであること。と書くと、あまりにも平板な表現だから補足する。
先進国におけるBセグメントには、「小さな高級車」ニーズが一定数ある。大きいクルマは気を遣うので気軽に乗れる小さいクルマを選びたいが、別に安い必要はない。むしろ多少高くても所有する満足感の高い小さなクルマがほしいという人がいるのだ。ところがデミオのような5ドア・ハッチバックのコンパクトではどんなにスタイルを磨いても「軽自動車と同じ車型」という社会通念を覆すのは難しい。
そういうニーズを満たすのにBセグSUVには非常に大きなポテンシャルがある。しかも真面目なマツダのことだ。CX-3のデビューにあたり「クロスオーバー」というコンセプトを持ち込み、お年寄りが膝などに負担なく乗り降りできる60cmのシート高を設定するなど、ユニバーサルデザインとしての価値を盛り込んできた。誰にでも使いやすく、特別な改造を施さずとも吊るしの状態で少しだけ福祉車両。高級にはこういう解釈もあるのだという意味で筆者は大いに刺激を受けた。小さな高級車という前人未到の大きな目標にCX-3は挑んでいる。
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