「腹割って話せる度」と「プロジェクトの成功率」は比例する:榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』(3/3 ページ)
プロジェクトを成功に導くカギとなるのは、“腹を割って話せる関係”であること。その関係を築き、プロジェクトの完了まで継続的するためのコツとは?
3. 「キックオフ+中間振り返り」で気付かせる
プロジェクトのキックオフで、「このプロジェクトを成功させるために必要だと思うこと=主要成功要因」を表明する場を設ける。
「あなたは、プロジェクトの成功のために何が欠かせないと思っていますか?」と一人一人に聞くのである。
ケンブリッジでは、毎回必ずやっているのだが、この場で「立場を超えて、プロジェクトの成功のために本音で話し合える関係が必要だと思っています。雇い・雇われ、上司・部下の関係を超えなければ、真の成功は難しいと思う」と誰かに言ってもらえればいい。
この内容には、皆さん、たいてい共感してくれるし、けっこうハッとするものだ。
「ああ、確かにそうだな」と思ってもらえたらGood。地道な手段だが、長い目でみるとけっこう効いてくる。
そして、定期的にプロジェクトの関係者全員を集めて「振り返り」を行うのだ。
- キックオフのときに語った「立場を超えて、プロジェクトの成功のために本音で話し合える関係」は今も保たれているか?
- 自分の都合を優先させていないか?
- 改善すべき点はないか?
といったことを確認し合う。振り返りで、他者から指摘されて初めて自覚できることもある。お互い人間で、出自も所属組織や会社も違う。価値観も経験値も違うのだから、本当に気を付けていないと、すぐに心理的な壁ができてしまうのである。
まとめ
結局は「人の心の持ちよう」が重要になる。顧客がITベンダーを採用するときのために、ケンブリッジがよくお伝えしている話があるので、ちょっと紹介したい。
ベンダーを業者と見て「使い倒そう、うまいこと働かせよう」と思っているとうまくいきません。彼らも人間で、雇い主がそういう雰囲気を出すと、どうやって雇い主をだまくらかすかを考えるようになります。
だから「下請け」と思わず、一緒にプロジェクトを成功させる「同志」だと思ってほしいのです。彼らの立場に立ち、どうすればやる気を引き出せるか、本音を引き出せるか、Win-Winな関係を作れるか、を考えてほしいのです。
彼らを同じ目的のために努力している同志として接すれば、大きな推進力が生まれるはずです。
そして、本音で話せる関係を作るには、まず自分の姿勢を変えることから。
- コンサルを業者扱いする顧客はダメ
- 顧客を雇い主扱いするコンサルもダメ
- 顧客をばかにするコンサルもダメ
- ITベンダーを下請けだと思っている顧客もダメ
- 顧客の言うことに従えばいいと思っているベンダーもダメ
心に留めていただきたい。つまり、プロジェクトの成功のために、「ともに戦う戦友」だと思って接しなければならないのです。
これには、「会社の姿勢や文化」が色濃く影響する側面もある。僕らがこう伝えても、ピンと来ない企業も存在する。だが、それはそれで価値観だから仕方ない。僕らはそういう会社とは付き合わないことにしている。プロジェクトを成功に導けないからだ。
さて、あなたは顧客と本音で腹割って話していますか?
著者プロフィール:榊巻亮
コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
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