時間短縮だけではない 「真の働き方改革」とは?:NRIのプリンシパルに聞く(1/2 ページ)
働き方改革に関して、長時間労働の解消、AIなどの最新技術を活用した定型的作業の自動化といった、時間短縮や業務の効率化に関する取り組みが注目される。しかし、成果を出す「真の働き方改革」は、時間だけではなく、業務の質の向上が重要ではないだろうか。
2016年に政府が「働き方改革」の取り組みを提唱したのを機に、企業の「働き方改革」は活発化しています。
その内容としては、長時間労働の解消、人工知能(AI)等の最新技術を活用した定型的作業の自動化といった、時間短縮や業務の効率化に関する取り組みが注目されていますが、「成果を出す『真の働き方改革』は、時間だけではなく、業務の質の向上が重要である」と野村総合研究所(NRI)は考えます。
企業の経営管理制度の構築や人材開発プログラムの設計・運用を支援する、コーポレートイノベーションコンサルティング部 プリンシパルの黒崎浩に、業務の付加価値を高める働き方改革のポイントについて聞きました。
労働時間短縮に終わらない、真の働き方改革を目指して
――現在、各企業の働き方改革はどのような状況でしょうか?
多くの企業が当面の目標として取り組んでいるのは、長時間労働の解消です。社内の無駄な残業削減の呼びかけ、オフィス電気の消灯・PC制限など、さまざまな取り組みが行われています。
さらに、RPA(Robotic Process Automation)を活用した業務改革などにより、多くの企業で残業時間の削減が進みました。しかし、「本当に必要な時間まで削ってしまっていないか?」「重要な仕事が終わっていないのに無理に帰っていないか?」という新たな課題に直面する企業も出てきています。単に働く時間を短くするだけでは働き方改革の一里塚にしかならず、真の働き方改革には「仕事の価値」そのものを上げる必要があります。
――真の働き方改革に求められるものとは何でしょうか?
働き方改革は、労働生産性の向上がゴールです。労働生産性は「仕事の成果」と「時間」の割り算なので、長時間労働の改善が進んだ今、考えるべきは分子となる「仕事」の質をいかに上げていくかだと思います。言い換えると、「個人の仕事の価値や意味を考え直すこと」が求められているのです。
AI技術などの進歩により、10年後には人間が担わなくてもよい仕事も多く出てくるといわれています。その10年後に備えるためには、会社も働くわれわれも今から準備をしておく必要があると考えています。同じ時間の中で、より質の高い、付加価値の高い業務を個人が行える組織を作っていく必要があるのです。
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