時間短縮だけではない 「真の働き方改革」とは?:NRIのプリンシパルに聞く(2/2 ページ)
働き方改革に関して、長時間労働の解消、AIなどの最新技術を活用した定型的作業の自動化といった、時間短縮や業務の効率化に関する取り組みが注目される。しかし、成果を出す「真の働き方改革」は、時間だけではなく、業務の質の向上が重要ではないだろうか。
パフォーマンスマネジメント改革という考え方
――そのような状況で、今働き方改革としてできることはどんなことがありますか?
NRIでは「パフォーマンスマネジメント改革」を提案しています。「パフォーマンスマネジメント」とは、社員の能力・モチベーションを引き出し、成果へと結び付ける人材マネジメント手法です。短期的には、部下・チームのパフォーマンスの向上、中・長期的には、人材育成を通じた組織力の強化につながります。多様な経験値を積み上げ、個人としての価値を高めていくことができるように社員の働き方を上司や会社が支援していき、会社全体としても良くなっていくことを目指すのです。
パフォーマンスマネジメント改革を行う上では3つのことが重要です。1つ目は「ありたい働き方の設定」、特に「個人の業務価値の再定義」です。その際、設定した目標の実現に向けて従業員が奮い立つような仕掛けや、具体的なプロセス改革の方法論を用意することが求められます。
2つ目は、「管理職・マネジメント層の変革」です。管理職・マネジメント層がこの活動の中での自身の役割の重要性を認識し、さらに必要なスキルセットを保有してもらうことです。ワークショップなどを通じた意識改革や研修などによるコミュニケーション力の向上を目指す必要があります。
最後は、「個人の活動や実績を管理・指導するためのツールの整備」です。個人の定量的、定性的な活動をタイムリーに見える化し、相談や指導を適宜できる体制を整えることで、個人に最適な形で成長するための仕組みが出来上がるのです。
――真の働き方改革に向け、従業員にとって必要なことはどんなことでしょうか?
一人一人が自分の仕事について一度振り返って考えてみることです。「誰がお客さまで、どういう価値を提供しているか」「その手順に欠かせないものは何か」を見直してください。企業が今後求めるのは、「仕事」の質の向上です。自らがどのように付加価値を出していくのかを継続的に考え、自己研鑽や自己投資など必要に応じた対策を採っていくことが求められます。
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