「シンギュラリティには一生行きつかない」 安川電機・津田会長に聞く「ロボット産業の未来」:「外国人労働者受け入れ」は人手不足解消の解じゃない(5/5 ページ)
ロボットメーカー大手の安川電機会長で、国際ロボット連盟(IFR)の会長でもある津田純嗣氏にロボットの果たすべき役割について聞いた。
「ロボット導入」により人間の生産性も上がる
以上が津田会長へのインタビュー内容だ。AIを内蔵した最先端のロボットを普及させる以前に、建設現場などにある「3K職場」の改善が先決だという津田会長の強い思いが伝わってきた。
この数年、AIやコンピュータの進歩により、人間の仕事が奪われて失業者が多く出るという衝撃的な予測が多く出されている。だが、現状ではホテルの受付、掃除、警備補助、いやしのためのコミュニケーション程度にしか実用化されていない。一日でも早く、「3K職場」に導入できるロボットを実用化してもらいたい。
中小ビルの建設現場でよく見かけるのが、コンクリートを作るため、作業員がセメント袋を担いで運ぶ光景だ。1971年までは一袋50キロもあったが、それが40キロになり、96年からは25キロまで軽量化された。それでもこの重い袋を1日に何回も担ぐのは「きつい」「危険」な重労働だ。
スペースのない、狭い物流現場では、フォークリフトも動かしにくく、ロボットは稼働させにくいといわれている。だが、こうした現場にこそ、積極的にロボットを導入して作業員の過重労働をなくす必要があるのではないだろうか。
放射能に汚染されて人間が近寄れない原子力発電所における内部の撮影、修理などはロボットにしかできない作業だ。実際には何種類もの国産ロボットを試したものの、ガレキが散乱した狭い空間のために故障が多く、目立った成果は挙げられていない。組み立てラインで使う日本製のロボットは世界でも有数の技術を誇る一方、原発のような極限的な現場で使えるロボットとなると、外国製でも使えるものはないという。
こうした危険な作業現場にロボットを導入することで、人間が身体を壊さず長期的に働ける技術や仕組みが実現すれば、「ニッポン株式会社」の生産性も確実に上げられる。
関連記事
- 二宮和也主演「ブラックペアン」で話題の手術支援ロボット 直腸がん手術「第一人者」に聞く
二宮和也が「オペ室の悪魔」と呼ばれるダークヒーロー役を演じる人気テレビドラマ「ブラックペアン」に登場する手術支援ロボットが、いま日本の医療施設に普及しようとしている。ロボットを使った直腸がん手術の第一人者である絹笠祐介・東京医科歯科大学教授に現状と課題を聞いた。 - フォーミュラE参戦に見る「仁義なきEV主導権争い」
「電気のF1」と呼ばれ、電気自動車推進のツールとなっているフォーミュラE。メルセデス、BMW、アウディの「ドイツ御三家」などが参加する一方、日本勢のトヨタ、ホンダは不参加。そこで繰り広げられる「EV主導権争い」の実情とは――。 - 「単純労働」は淘汰されない 「AIで仕事がなくなる」論のウソ
「今後15年で今ある仕事の49%がAIによって消滅する」。野村総合研究所は2015年に衝撃的なレポートを出した。それから3年たった今、実際に起こっているのは「人手不足」である。AIによって私たちの働き方はどのように変わるのか。気鋭の雇用ジャーナリストが解き明かす。 - 「グーグルには売らない」 日本勢は音声翻訳で覇権を握れるか
音声翻訳の技術は向上し、2020年の東京オリンピックまでには多くの場所で手軽に使えるようになりそうだ。日本勢がグーグルやマイクロソフトに打ち勝って、音声翻訳の市場で覇権を握れるかどうかが今後のカギとなる。 - 「第二の松下幸之助に」 パナソニック出身のベンチャー社長が15年かけてパワードウェアを作った理由
パナソニックが出資するロボットベンチャーATOUNは「着るロボット」とも言われる、物流現場での負担を軽くするパワードウェア(装着型ロボット)「モデルY」の販売を今夏に開始する
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.