100人超の社員と約280社を巻き込んだローソンの「発注改革大作戦」:30年ぶりの刷新(3/5 ページ)
ローソンが30年ぶりに発注システムを大きく変えた。夕方以降の品ぞろえを強化することと、店舗の在庫状況を見ながら柔軟に発注内容を調整できる仕組みを構築するのが目的だ。100人以上に及ぶ社員と280社近くが関わるプロジェクトはどのように進められたのだろうか。
本格的な交渉がスタート
改革を進めるうえで重要になるのは、約280社にも及ぶ米飯ベンダー、メーカー、物流センターなどとの交渉だった。
簡単にいうと、午後2時締めの発注内容に基づき約23時間後に納品すればよかったものが、午後10時締めの発注を受けて15時間後に納品することになる。すると、今までの製造・配送体制を再構築する必要に迫られる。
具体例で説明しよう。例えば、ある食品メーカーはローソンだけでなくほかの量販店やコンビニチェーンにも商品を配送している。これまでは、ローソン向けの商品をトラックに積み込んでから、A社、B社…と順番に作業を進めていた。しかし、変革後は、ローソン向けに発送する時間が、A社やB社向けに発送する時間と重なってしまうため、作業人員やトラックの再配置が必要となる。場合によっては、一時的に扱う商品数が増えるため、作業スペースが不足することもありうる。
さらに、弁当をつくる米飯ベンダーが大きな影響を受けることになった。これまで、午後2時締めの発注に基づいて製造していたが、午後10時締めの発注に基づいて製造する体制になる。しかし、店舗への納品時間は変わらない。製造のタイムテーブルを抜本的に見直さなくてはいけなくなった。
このように、発注システムを変更することで、メーカーや米飯ベンダーなどにさまざまな影響が出る。しかも、その内容は各社異なる。交渉作業を約280社と行うことが、どれだけ大変なことか、想像できるだろう。
秦野氏はこのプロジェクトで、情報集約や議論を調整・リードする役割を担った。
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