「全面禁煙化」から1カ月 串カツ田中が得たもの、失ったもの:串カツを「文化」にできるか(2/3 ページ)
串カツ田中が全面禁煙化に踏み切ってから1カ月がたった。客層や売り上げにはどんな変化があったのか。運営元の串カツ田中ホールディングスが報告書を公開し、成果と課題点を明らかにした。
“稼ぎ時”が変わった
時間帯別では、かつてピークだった午後7時台と午後11時台の売り上げが午後8時台と午後10時台に分散するなど、早い時間帯の売上高が増加。その一方、深夜帯の売上高は減少したという。
これに対しても「明確な結果が出て、施策の影響を確認できたことは一つの収穫。詳細は未定だが、売り上げが減った時間帯に対して的確なアプローチを取ることで課題を解決していきたい」(同)としている。
近隣の路上で喫煙する客も
だが、禁煙化の反動はこれだけではない。同社によると喫煙者が来店した際、店内でたばこを吸えないため近隣の路上などで喫煙し、ポイ捨てをするケースが増えたという。通行人が受動喫煙することが多くなり、近隣施設や地域住民から苦情が出ることもあるとのことだ。
この問題はどう解決するのか、串カツ田中HDは「スタッフに清掃の回数を増やしてもらうなどの対応はすでに始めている。地域との関わり合いは当社にとって重要。地域の皆さまに気持ちよく利用してもらえるよう、マネジャーや従業員から意見を聞き、早急に対応策を立案したい」としている。
客とスタッフからの意見は……?
同社が公表した顧客からの声は、「禁煙になってうれしい」「安心して子どもを連れて来れる」「妊婦でも来れる」という意見がある一方、「禁煙になって残念」「もう来ない」「居酒屋でたばこが吸えないなんてありえない」という声も。賛否両論だったようだ。
従業員からは「灰皿の片付けがなくなったので、ウェイティングの顧客を早く通せる」「回転率が上がった」「快適に働けるようになった」とオペレーション面の改善を評価する意見が出たとのこと。
その一方で、「喫煙する常連客がいなくなり、残念だ」「禁煙と聞くと帰る顧客が1日4組程度いる」「席数が少ない店は取りこぼしが起きている」と“顧客離れ”を嘆く意見や、「居酒屋というよりも食事処としての利用が増え、提供スピードの速さが求められている」とオペレーションの変化を指摘する声も挙がったという。
これを受けた串カツ田中HDの見解は、「禁煙になったことを知らずに来店し、入店をやめる顧客がいるため、禁煙化に対する認知度はまだまだ低い。変化の過渡期にあるため、禁煙化によって来店増加が見込める潜在層のターゲットも多い。これからの認知拡大で来客数はより増加していくだろう」とあくまで前向きだ。
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