ユニクロのエアリズムにみる「脱・安かろう悪かろう」の研究:宣伝広告と地道な商品開発が奏功(1/4 ページ)
かつては「安かろう、悪かろう」のイメージが強かったユニクロだが、今やお手頃な価格で高機能の商品が売れるようになった。ここに至るまでの地道な取り組みを商品開発や宣伝広告の面から検証する。
一度消費者の頭に刻み付けられたイメージを払拭(ふっしょく)するのは難しい。例えば「ユニクロって安いけど、品質はそこそこでしょ」と考えている読者もまだいるかもしれない。しかし、ユニクロはコツコツと商品の品質と機能性の向上に努め、今では「同じ種類の商品なら、総合的な品質や機能性の面で当社が一番」(広報担当者)と豪語するまでになった。また、同社の商品は他社の競合商品とくらべて、必ずしも安いとはいえなくなってきている。
2017年9月〜18年2月の国内既存店売上高は前年同期比8.4%増と好調だった。「ヒートテック、ダウン、スウェット、メリノセーターなどのユニクロが強みとする秋冬商品の需要が強かったため」(広報担当者)というのが主要因だが、ヒートテックはその機能性が消費者に支持されており、累計販売数は10億枚を超えるまでになった。
今回は、ユニクロがいかにして「安かろう、悪かろう」から脱出するようになったのか、その軌跡を同社のヒット商品シリーズである「エアリズム」を中心に紹介したい。
毎年機能をアップグレード
2007〜11年にかけて、ユニクロは春夏シーズンを代表する機能性インナーとして「サラファイン」と「シルキードライ」を投入した。衣服内の湿度を抑え、ムシムシする時期でも快適に過ごせると提案したことが受け、累計約5400万枚が売れるヒット商品となった。
エアリズムは、サラファインとシルキードライを12年に統一したブランドとして誕生したが、その後、毎年のようにさまざまな機能を付け加えていった。例えば、通気性を1.8倍にしたり、消臭機能を追加したり、9%軽量化したりといった具合だ。新機能が追加されることで別の機能がなくなることはなく、毎年、どんどん機能的に強化されていくとイメージすればよい。
エアリズムの機能は「吸汗速乾(汗をかいてもすぐ乾く)」「接触冷感(着た瞬間にひんやりとする着心地)」「吸湿・放湿(呼吸する繊維が衣服内を除湿)」など全部で9つあり、数値などで評価できるという(詳細は非公表)。同社広報担当者は「他社製品のなかには、1つの機能だけをフォーカスして『No1』とアピールしているところがありますが、当社のエアリズムはトータルで圧倒的に強い」と胸を張る。
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