横綱の稀勢の里が引退できない、2つの背景:赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)
横綱・稀勢の里の休場が続いている。8場所連続の休場なので「引退」していてもおかしくはないが、なぜか周囲は“寛容”である。その理由は……。
どうしても稀勢の里に辞めてほしくない
稀勢の里は貴乃花の連続休場ワースト記録を抜き、とうとうデッドラインをも超えてしまった。その貴乃花ですら当初同情的だった世間からの声は休場が1年近くたったころから猛バッシングへと変わり、横綱審議委員からも苦言を呈せられるなどして完全な逆風にさらされていた。「平成の大横綱」は現役晩年、このような苦汁を飲んでいたのである。
ところが稀勢の里は同じような境遇となっているにもかかわらず、周囲は比較的寛容だ。横綱審議委員会も名古屋場所前から今場所での出場を義務付けず、万全な状態での復帰を求めていた。休場を決めた際も北村正任委員長は「休場となったことは残念だが、万全ではないと自ら判断したのだからやむを得ない」「来場所に全てをかけるという本人の決意を尊重したい」などとコメントした。
優勝回数2回の横綱が“大甘”な言葉を投げかけている一連の流れは、何だが過保護にされているようで率直に言うと気持ちが悪い。大横綱・貴乃花が同じ横審から連続休場中に痛烈なバッシングを受けていた当時を知る者としては、どうしても「エラい違いだな」と感じてしまう。
横審も含め日本相撲協会のお偉方は、どうしても稀勢の里に辞めてほしくないのだろう。それはそうだ。下り坂とはいえ、今も大相撲のトップは紛れもなく白鵬である。しかしながら、その大横綱は明らかなスーパーヒール。取り口では反則まがいの張り手やかち上げを見せたり、土俵以外でも何かと物議を醸したりすることも多い。
そうしたマイナスイメージばかり引きずる白鵬に対し、貴乃花以来途絶えていた14年ぶりの日本出身横綱となった稀勢の里にはクリーンな新スター力士として日本の伝統を何としてでも守ってほしいという願望を多くの相撲ファンが持つようになっていった。このような背景と構図が日本相撲協会だけでなく、所属の田子ノ浦部屋など稀勢の里周辺の面々にも誤った考え方を助長させてしまったのだろう。
関連記事
- 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。 - 卓球王者の張本が、いまひとつ支持を得られない要因
全日本卓球選手権の男子シングルス決勝で、14歳の張本智和が王者・水谷隼を破って優勝した。最年少優勝の偉業を達成したのに、いまのところ“張本フィーバー”は起きていない。なぜ新王者がいまひとつ支持されないかというと……。 - なぜ地図で「浅草寺」を真ん中にしてはいけないのか
地図を作成している編集者に、2枚の地図を見せてもらった。1枚は浅草寺が真ん中に位置していて、もう1枚は浅草寺が北のほうにある。さて、実際に地図に掲載されているのは、どちらなのか。答えを聞いたところ、予想外の結果に!? - 大人たちによって作り上げられた“ポスト真央”、本田真凛の悲劇
オトナたちによって作り上げられた「悲劇のスター候補」だったのかもしれない。女子フィギュアスケートの本田真凛のことだ。期待されていた韓国・平昌五輪の代表入りを逃してしまったことで、今後の彼女はどうなる? - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.