メーカーから依頼殺到 お客が思わず引き寄せられる試食販売の世界:“凄腕”スタッフは40倍売る(3/4 ページ)
試食販売というと「商品を持ってただ立っている人」をイメージする読者も多いかもしれない。しかし、売り方を工夫して普通のスタッフの40倍売る“凄腕”がおり、試食販売の高い効果に注目する企業が増えているという。知られざる試食販売の世界とは?
テクニックより大切なもの
「『商品を買ってほしい』と考えすぎたり、『楽しくない』と思っていたりするとお客さまにすぐに察知されてしまいます。こちらの気持ちばかりを押し出してはダメです」
鈴木氏によると顧客に購入してもらうにはテクニックも大事だが、売る側の“メンタル”が最も重要だという。
ADSでは、商品のセールストークをまとめた資料や、推奨する商品の概要を記した指示書を事前に配っており、当日までに読み込めば誰でも必要な情報をインプットできるようにしている。さらに、あるSAの成功例を翌日以降に共有できる仕組みも整えている。
しかし、そういった“マニュアル”が充実すればするほど、「しっかり勉強しなくてはいけない」「売らなくてはいけない」というプレッシャーがかかり、自然な接客ができなくなるSAもいる。また、ベテランのSAであっても、体調が悪かったりスランプに陥っていると、表情に出てしまい、思ったような成果が出せなくなる。
「笑顔になる、声をしっかり出す、姿勢を正すというのは基本中の基本です。お客さまはリラックスして来店されるので、スタッフもニコニコしていたほうがいいですよね。しかし、肩に力が入ったり、不機嫌だったりするとその基本がおろそかになってしまいます」
つまり、いかにして基本を徹底し、顧客とSAとの間にあるハードルをなくすかが大切なのだ。
鈴木氏は新人だけでなくベテランも指導するが、細かいテクニックを教えることはほとんどない。むしろ、リラックスさせるために、SAの好きな食べ物を聞き出したり、その場で10回垂直飛びさせたりするという。SAの足りないところを注意すると気分を悪くしてしまうという理由もあるが、自分の力を出し切れるような状態にすることが最も大事だと考えているからだ。
こういった鈴木氏の話を聞いていると、“メンタル”が結果を左右するアスリートの世界に通じるものがあるように感じてくる。
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