「アイコス」は紙巻きたばこより安全――フィリップモリスが強調する狙いとは:念願の米国展開なるか(1/2 ページ)
フィリップモリスが、紙巻きたばこから「アイコス(IQOS)」に切り替えると疾病リスクが下がるとの試験結果を発表。切り替えた人は、喫煙を続けても体内から発がん性物質などが減っていたという。結果はFDAに提出済みで、米国での販売許可獲得につなげる狙い。
紙巻きたばこから加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」に切り替えると、循環器疾患や呼吸器疾患などが生じるリスクが低減する――フィリップモリスジャパンは7月18日に都内で会見を開き、こうした臨床試験結果を発表した。
試験は、紙巻きたばこを日常的に吸う喫煙者を対象に実施。紙巻きたばこを吸い続けた人と、試験開始時にアイコスに切り替えた人を半年間追跡し、血液検査などを実施した。その結果、前者に大きな変化はなかったものの、後者は発がん性物質「たばこ特異的ニトロソアミン総量(Total NNAL)」などの数値が低下していたという。
「アイコス」は紙巻きたばこより病気になりづらい
親会社である米Philip Morris International(PMI)でサイエンス&イノベーション ディレクターを務めるパトリック・ピカベット医師は、「アイコスが喫煙に起因した病気のリスクを緩和できる見込みであることが疫学的に明らかになった」と自信を見せる。
PMIはこれまで、3000億円超を投じてさまざまな臨床試験を実施。(1)アイコスが発する有害物質は紙巻きたばこよりも約90%少ない、(2)レストランなどの室内でアイコスを使用しても、非喫煙者への受動喫煙被害はほとんどない――といった結果を発表してきた。
まだ米国展開には至らず
今回の試験は米国で実施し、結果を米国食品医薬品局(FDA)に提出済み。アイコスを世界38カ国で展開するPMIだが、FDAには2016年12月〜17年3月に販売申請を提出したものの、現在も審査が続いており、米国での販売には至っていない。この結果によってアイコスの安全性をアピールし、販売許可の獲得につなげる狙いだ。
ヘビースモーカーの体調はどう変わるのか
試験は15年3月〜16年9月にかけて、計984人の喫煙者を対象に数回実施。被験者の平均年齢は45歳、平均喫煙歴は26年で、1日当たり平均19本の紙巻きたばこを吸っていた。試験では、被験者のうち496人が成分を統一した試験用の紙巻きたばこを吸い続け、488人がアイコスに切り替えた。
その結果、アイコスではTotal NNALのほか、脂質代謝に影響するコレステロール「HDL-C」、凝固系に影響する代謝物質「11-DTX-B2」などの数値が改善していた。
急性のめまいや嘔吐(おうと)に影響する一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)や白血球(WBC)などの量も改善しており、計8項目の評価指標の全てが、禁煙している元喫煙者のサンプルと同水準に近づいたという。
さらにHDL-Cなど5項目では、アイコスに切り替えると、紙巻きたばこよりも喫煙に起因する病気になるリスクを下げられるという統計的に有意な結果も得られたとしている。
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