「副業解禁」時の注意点とは? 人事担当者必見の「働き方改革」用語解説:必須キーワードを識者が解説(2/2 ページ)
働き方改革関連法が可決・成立し、企業にも具体的な対応が求められます。企業の人事担当者が押さえておくべき「働き方改革」のキーワードをピックアップ。労働問題を扱う新進気鋭の弁護士が、用語の概念と企業が取るべき具体的な対策方法を解説します。今回は「副業・兼業」についてーー。
【チェックリスト】
副業・兼業を許可制にする場合でも、職務専念義務や秘密保持義務・競業避止義務との関係を検討する必要があります。さらに、長時間労働の防止や健康管理の観点から、労働時間の把握と管理が必要になります。
以下は、副業・兼業を許可制にする場合のチェックリストです。
1. 副業・兼業に関する動向を把握し、資料を入手したか?
- 厚生労働省のWebサイトには「副業・兼業の促進に関するガイドライン」、「『副業・兼業の促進に関するガイドライン』Q&A」などが掲載されており、その内容を十分に確認する。
2. 副業・兼業に関する規定・運用を確認したか?
- 正社員以外に非正規社員への規定についても確認する。
- 職務専念義務以外にも、秘密保持や競業避止に関する規定も確認する。
- 過去に副業・兼業を許可した事例、実績を確認する。
3. 副業・兼業を許可する場合、いかなる条件を設けるか?
- 規定する事項としては、(1)禁止・制限の方法、(2)許可・不許可事由、(3)許可に当たっての条件・手続き、(4)許可後の報告義務、(5)許可後の取り消し事由、などがある。
4. 許可条件を順守しているかをどのように把握するか?
- 誓約書や報告書の提出により確認する。
- 許可期間を設定し、更新時に順守状況の確認を実施する。
5. 副業・兼業の時間(労働時間)を把握する際の留意点は?【注】
- 割増賃金や健康管理の観点から副業・兼業の日数・時間の把握が必要。
- 外国人留学生や未成年者に関する労働時間規制も確認する。
【注】
副業・兼業では、労働時間の規制にも注意が必要です。労働基準法38条1項では、異なる事業場における労働時間を通算することとしており、事業主(使用者)が異なる場合でも通算されるからです(昭和23年5月14日基発769号)。
労働基準法は強行法規なので、労働者側との合意によって上記通算を排除することはできません。また、労働時間に該当するか否かは客観的に決まる(当事者間の合意によって決まるものではない)というのが判例(最一小判平成12年3月9日)なので、「就業規則や合意書で『副業・兼業の時間は労働時間には該当しない(算入しない)』という取り扱いもできません。
副業・兼業における労働時間管理については、チェック項目「1」で挙げた「ガイドライン」や「Q&A」で解説されています。
著者プロフィール
高仲幸雄(たかなか ゆきお)
中山・男澤法律事務所パートナー 弁護士
早稲田大学法学部卒業。2003年弁護士登録。現中山・男澤法律事務所所属。国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師。著者に『改訂版 有期労働契約 締結·更新·雇止めの実務と就業規則』(日本法令)、『異動・出向・組織再編 適正な対応と実務』(労務行政)など著書多数。
関連記事
- 今さら聞けない「働き方改革」 人事担当者必見の用語解説
働き方改革関連法が可決・成立し、企業にも具体的な対応が求められます。企業の人事担当者が押さえておくべき「働き方改革」のキーワードをピックアップ。労働問題を扱う新進気鋭の弁護士が、用語の概念と企業が取るべき具体的な対策方法を解説します。初回は「働き方改革」の大枠を解説します。 - “普通の会社員”には無縁!? 蔓延する「副業万歳論」のワナ
新進気鋭の雇用ジャーナリスト海老原嗣生が、働き方改革の実相を斬る。今回は「兼業・副業・ダブルワーク(Wワーク)推進」の陥穽を指摘していく。 - 働き方改革関連法の成立で仕事はどう変わるか?
働き方改革関連法が可決・成立した。国会審議では「高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)」の是非が主な争点となったが、同法案がカバーする範囲はもっと広い。法案の概要と施行後にどのような影響が及ぶのかについて考察する。 - 残業手当はすぐになくしたほうがいい カルビー・松本会長
日本を代表する「プロ経営者」として、さまざまな経営改革を推進してきたカルビーの松本晃会長兼CEO。働き方改革にまつわる日本企業の問題点について、真っ先に「残業手当」を挙げる。 - 社員の働き方を変える実にシンプルな方法 カルビー・松本会長
「プロ経営者」として日本を代表するカルビーの松本晃会長兼CEO。今月末でカルビーの会長職を退任予定の松本氏に、同社での9年間を振り返ってもらうとともに、注力した働き方改革についてインタビューした。 - ソフトバンクが「副業解禁」のノウハウ語る 経産省交えたシンポジウム開催
「『副業解禁』で何が変わる?」 と題したシンポジウムで、昨年に副業を解禁したソフトバンクの事例などが語られた。 - 賛否両論の丸紅「社内副業」義務化 人事部長に真意を聞いてみた
大手総合商社の丸紅による「社内副業義務化」報道が議論を呼んでいる。丸紅の鹿島浩二人事部長に真意を聞いた。 - コニカミノルタ常務を直撃 「副業解禁に踏み切った理由」
コニカミノルタが「副業解禁」に踏み切った背景と今後の目指す姿について、常務執行役の若島司氏に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.